きっとAIは、人から仕事を奪えない
column vol.1064
OECDが今月11日(アメリカ時間)に発表した新たな報告書が世界中に衝撃を与えました。
何と富裕国の27%の労働者がAIに取って代わられる可能性があるというのです…(汗)
〈Forbes JAPAN / 2023年7月14日〉
…まぁ、AIが人間の仕事を奪う的な話は…、これまでも散々あったのであれですが…、改めてOECDの公式見解という形で聞くと背筋が伸びるものがあります…
ということで、本日は「本当に人間の仕事は代替されていくのか?」ということについて考察したいと思います。
労働人口の27%が失業(?)
まずは、OECDの報告書に対して改めて目を向けてみます。
言わずもがな、アメリカやカナダを始め38の加盟国で構成されており、当然ですが日本も入っております。
では、どんな仕事が代替されるのか気になるところですが、その職種は、建設業から農業、漁業、林業そして製造業や運輸業などなど、多岐に及んでいるとのこと…
そういえば、世界経済フォーラムが2020年に発表した雇用報告書では、「2025年までにAIに取って代わられる」と試算した雇用の数が8500万人でしたね…
そうした危機感から、最近でいえば、イーロン・マスクさんや、アップルの共同創業者スティーブ・ウォズニアックさんたち技術関係者グループが、AIシステムにブレーキをかけるよう開発者に促す書簡を提出。
ますます高度なシステムを作ろうとする「制御不能な競争」に警告を発しました。
chatGPTを開発したオープンAIのCEO、サム・アルトマンさんも5月、初めて臨んだ米上院の小委員会で「AIは適切に制御しなければ人類に厄災をもたらす」と警鐘を鳴らしています。
AIの想像以上の進展の早さに、世界中で再び緊張感が生まれているのです…
AIは全ての仕事を奪う??
そういえば、4月にガンホー・オンライン・エンターテイメントの創業者で実業家の孫泰蔵さんが『PIVOT TALK』に出演した際も、ちょっぴりドキッとする未来を語っておりました。
〈PIVOT TALK / 孫泰蔵氏 前編〉
〈PIVOT TALK / 孫泰蔵氏 後編〉
孫さんは、最も厳しい見方をしておりまして、時期は明言していないものの「AIは全ての業種の仕事を奪う」と予測しておりました…
一方で!
逆に「働かなくても生きられる社会が到来する」とも考えていらっしゃるのです。
つまり、「全ての労働はAIが担い、人間は貴族化する」と。
確かに、人間が生活していくのに必要なものを機械(AI)が生み出し、機械が自分自身(?)や他の機械をメンテナンスしていけば
それはまるで果物の食料などが自然の循環によって生まれるように、必要なものが人間が介在しないで生まれる可能性はあります。
その分、人間は肉体労働から解放された貴族のように芸術や文化、娯楽を通して社交を楽しんでいく。
…私も薄らですが、衣食住に関わるものは無償化されてもおかしくはないと思っています。
なぜなら、現在もコンテンツなどが無償化するものが増えているからです。
音楽はSpotify、地図はGoogleマップ、学習はYouTubeやネットなど、以前は購入が必要だったものが、ケータイ1個で無償化されている。
もちろん、コンテンツにも有料版があるように、全てが無償化するわけではなく、生きていくための最低限のものは無償で手に入るというような感じです。
その分、例えば小売で考えると、売り場やECが広告媒体化したり、AIによる行動解析をしたり、よりリテールメディアの色が濃くなっていき、そこでも収益化していく。
(YouTubeの広告収入+有料化のような考え方です)
そもそも、働き手がAIになることで商品のコストが下がれば、今までよりも遥かにお金をかけず、生活できる可能性は考えられますね。
ただ、きっと人間の仕事は無くならない
一方で、私は何だかんだいって、人間はAIから今の仕事を奪われても尚、働き続けるのではないかと考えています。
なぜなら、人間は「働きたい生き物」でもあるからです。
いや「働きたい」というよりは、「人から必要とされたい」とか「感謝されたい」という気持ちといった方が的確かもしれません。
仕事は「生きるため」であり、お金は「労働の対価」という言い方もできる一方、
仕事は「自己の存在証明」でもあり、お金は「ありがとうの印」と見ることもできるはずです。
後者の部分がある限り、人は自然と新たな仕事を生み出すはずです。
よく忙しくない人ほど、打ち合わせ時間や雑談時間が長くなる傾向がある気がしますが、本人は「コミュニケーションが大事」など、理由をつけて至極マジメに仕事をしているはずです(笑)
そして、この心理にこそ、AIが働き手を務める時代の、人間がシフトする新しい仕事のあり方があるのではないかと考えています。
それは何か?
ということです。
作業業務をAIが担い、人間の仕事は社交がメインになる。
例えば、私の知人に超一流企業の役員がいるのですが、彼はクライアントなどビジネスパートナーと、平日は毎晩のように飲み会(交流会)があり、週末はゴルフ三昧なわけです。
役員なので、現場の仕事は部下に任せており、オフィスにいてもビジネスパートナーとの小話(交流)に必要な情報や教養を身につけている。
例えば、次の懇親会の相手が外国人のビジネスパートナーであれば、その国の食文化を調べています。
そうして相手の心を掴み、商談を有利な方向へ持っていく。
それがお偉いさんだけの仕事ではなく、社員みんなの仕事になる感じです。
営業だけではなく、マーケティングの仕事だってそうなるはずです。
最近は、多くの会社のマーケティング部で「SNSを自分たちで発信しよう」と言われています。
今のところ、私のクライアント企業もSNS業務の全てをアウトソーシングしてくださる企業はゼロです。
さらに、社内インフルエンサーを育てている企業も増えていますので、マーケティング部員もメディアを通じてお客さんやアライアンス企業と社交することがメインになっていってもおかしくはない。
そうなると、可愛いダンスをTikTokで表現するために、社内研修に「ダンス」が加わるかもしれないですし
歌が上手いことが採用に有利に働くかもしれないのです。
そして、タレントをマネージャーが導くように、社員の個性や活躍ジャンルを発見し、育成するための「キャリアデザイン部」が生まれたり、社交でメンタルを崩した人を救う「メンタルケア部」が誕生したり。
他にも、人気社内インフルエンサーのボディーガードを務める「セキュリティ部」などなど、社交に付随した仕事が増えていくことだってあるかもしれません。
貴族社会とは「社交社会」
それはまさに孫泰蔵さんが指摘した「貴族化する社会」の姿なのではないでしょうか?
貴族は歌(俳句・短歌)を詠み、蹴鞠を蹴っていたわけです。
ローマ貴族に至っては、食事のおもてなしを受けるために満腹になった後、鳥の羽の枝を喉に突っ込み、一度リバースしてから、また食事に臨んだと言われています。
労働階級からすれば、ただ遊んでいるようにしか見えない光景も、彼らからすれば自分と家の面子をかけた真剣勝負を繰り返しているわけです。
タレントのタモリさんは
という名言を生み出しましたが、これは10年後、20年後の社会を表しているとすら思えてきます…(汗)
人間が人間と触れ合い、つながり合って生きていく社会はきっと変わらないわけで、そうなるとやはり貴族社会のように「社交力」こそが、これから身につけるべきスキルとノウハウになるような気もしてきます。
ちなみに、OECDの報告書では2025年までに、AIの結果としてさらに9700万人の新たな雇用が創出されるとも指摘しています。
つまり、8500万人の雇用が失われて、9700万人の雇用が生まれるということです。
社会の変容により、仕事も新たに創出されていく。
社交を置いておいても、人間が存在証明のために仕事を生み出し、周りの人間がそれを認めていく。
少なくとも「この仕事って、必要だよね」と人間同士でコンセンサスが取れれば、AIは人間から仕事を奪うことはできないわけです。
とりあえず、個人的には「社交力」は「自己投資」の注目銘柄として投資対象としておきたいと思います😊
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?