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“孤立” と “孤独” の時間を愛せるか?
column vol.899
最近、あるスマホが発売されることが話題になっています。
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「CAMERAに映える存在感」「どう見ても高級DEVICE」「大切なPRIVACY、万全のSECURITY」
広告ではこれらのキャッチフレーズが並び、最先端のスマホを予感させます。
〈FNNプライムオンライン / 2023年1月14日〉
名前は「AcryPhone」。
しかも、驚きの値段なのです。
iPhone14の値段が11万9800円〜なのに対し、AcryPhoneは3300円なのです!
…えっ、3300円…???
スマホ依存症を救うスマホ?
サイズは、高さ146mm×幅71mm×厚さ8mmで、重さ約100g。
…特に違和感はありませんね…(謎)
もう一度、写真を見てみましょう。
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おや…?このスマホ、画面もなく真っ黒です…
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そうなのです、「まるでSMART PHONE。」というキャッチフレーズが謎解きになっていますが、これはただの黒いアクリル板。
この製品は、“愉快な無用品”を発明するエコードワークスが1月下旬に発売する「スマートフォン型アクリルデバイス」。
スマホ用の保護フィルムやケースなどの市販アクセサリーでのカスタマイズも楽しめるという本格的なフェイクです。
製作者の「虚匠 フクサワ タカユキ」さんによると、AcryPhoneのアイデアは電池切れのスマホが黒い板に見えたことから着想を得たとのこと。
であれば、黒い板もスマホに見れるのではないかと製作したそうです。
とてもユニークな作品ですが、少しマジメなメッセージもあります。
「スマホ疲れを感じていたりスマホ依存を減らしたいと思っているけどスマホが手放せずに悩んでいる人には、もしかすると何かのきっかけが得られるかもしれません」
最近は「スマホ疲れ」「スマホ依存症」という言葉をよく聞きますが、実のところ、そのデメリットはよく分からないところもあります。
そこで今回は、今の私のトレンドである「哲学」の切り口から語りたいと思います。
〈孤立〉は腐食し〈孤独〉も奪われ〈寂しさ〉が加速
京都市立芸術大学美術学部デザイン科特任講師で、哲学者の谷川嘉浩さんはスマホによる「常時接続」についての弊害について指摘されています。
〈東洋経済オンライン / 2023年1月7日〉
SNSやLINEなど、私たちは誰かといつでも繋がれる利器(スマホ)を手にすることができました。
しかし一方で、誰かと「常時接続」できることによって、私たちはいつでも「寂しい状態」をつくり出してしまっていると谷川さんは仰っています。
〈孤立〉は腐食し、それゆえに〈孤独〉も奪われる一方で、〈寂しさ〉が加速してしまう
それが、スマホ(常時接続)の弊害であると。
その細い説明に入る前に、「孤立」「孤独」「寂しさ」の定義を行っておきたいと思います。
哲学者のハンナ・アーレントさんは、「一人であること」を上記の3つの言葉に分けています。
【孤立】
何らかのことを成し遂げるために必要な、誰にも邪魔されずにいる状態
【孤独】
自分自身と対話している状態
【寂しさ】
他の人々と一緒にいるのに自分はたった一人だと感じている状態
3つの言葉の意味は、一般的にイメージされる言葉の意味とは違う可能性があるので、上記の定義を踏まえて、この後の話を読み進めていただけると幸いです。
アテンションエコノミーの波
まず、スマホを手にしている時とは、どのような状態であるか考えてみます。
対面で誰かと話している時に、スタンプと短いテキストで4人にLINEを返し、フリマアプリが表示してくるお知らせをスルーして、早送り機能でソシャゲのストーリーを進め、Twitterでいくつかの記事を熟読せずにリツイートし、Instagramで気に入ったインフルエンサーの薦める服を保存しておく。
谷川さんが例を出されているように、対面しながらも、さまざまな情報処理や作業を同時に行っています。
よく友だち同士でスマホをいじり、画面に目を落としながら話している風景を見ることがあるでしょう。
当然ながら、何か1つのことに集中することはありません。
これが「孤立」が失われている状態です。
メディアや企業は自社の情報に注意を惹きつけるため、アプリのプッシュ通知を絶え間なく発信。
それを谷川さんは「アテンションエコノミー」と表現しています。
私たちは注意を奪い合う競争に巻き込まれている。
注意散漫になっているので、この状態ではコミュニケーションは反応的になってしまいます。
話す相手がスマホをいじっていたとしたら、恐らくこちらが一生懸命話したとしても、「うん、うん…」と聞いているのか聞いていないのか、分からない様子に見えるでしょう。
そして恐らく、聞いていない…
何となく反応的に返事している状態である可能性が高いはずです。
そうなると誰かと一緒にいても「寂しい」ということです。
もちろん、スマホを通じて常時接続されている仲間ともうっすら繋がっているに過ぎなく、誰といても、誰と繋がっていても「一人でいる」と感じるのでしょう。
足りないのは「情報」ではなく「思考」?
そして、ビジネスパーソンの視点に立っても、予測不能なVUCA時代は「孤立」と「孤独」が相当大切なのかもしれません。
……私もついついそうしてしまうのですが…
ちょっとした隙間時間があるとすぐにスマホで情報収集してしまう傾向にあります。
変化の激しい社会において、最新の情報をつぶさに手に入れたい。
ただ一方で、情報は知識のままだとあまり使えない。
知識は思考することで使えるようになるからです。
つまり、情報(知識)に向き合うにも「孤立(誰にも邪魔されず集中)」して行う。
そして、「孤独」になって自分自身に向き合う(情報について自問自答する)。
つまり、情報収集においての姿勢と、それに対して思考する時間をどうつくるのか肝要です。
もちろん、全部が全部は難しいですが、昨日のニュートラルになると同じですが、「孤立」「孤独」の時間を意図してつくるということです。
最近、妻とやっているのは、寝る前に読書をする時は、テレビなど他のメディアは一切遮断する(スマホも見ないようにします)。
そして、自分になりに咀嚼する時間をつくる。
咀嚼した考えをもとに、夕食時にお互いにその考えを披露します。
この時も一切、他のメディアは遮断します。
これを毎日繰り返しているうちに、今までは思考が広まっているだけだったのが、深まっている実感があります。
海は遠くに行くこともできますが(広がり)、深く潜ることもできます。
海の広さと深さを知ることが、本当の海を知る。
知識の海も同じなのではないかと思っています。
3年前、現代の情報量がいかに多いかという話を聞いたことがあります。
「2020 Internet Minute(1分間に起きているこれだけのこと)」によると 今の時代、1分間に
●130万回、Facebookにログイン
●470万回、YouTubeが再生
●Netflix、76万4000時間視聴
●Google、4万1000回の検索
そんなこんなで、2日間で新たに生成されるデータ数は、恐竜がいた太古の時代から西暦2000年までのデータに相当するそうですよ。
つまり、情報は溢れ過ぎていますし、当然ながら量を追っても追いきれない。
もしもこの時代、見聞を広げている割には答えが見えないとしたら、実は深く潜ることを忘れている可能性があるような気がします。
ちなみに、モバイルの利用時間は2023年以降の6年間で34%増加して、2028年にはAndroid端末のみで6兆時間に達する見込みとのことです。
〈@DIME / 2023年1月1日〉
…なるほど………、
そう考えると…、やはり「AcryPhone」は最先端のスマホなのかもしれませんね(笑)