消費者は「真実」を求めている
column vol.936
最近、「デ・インフルエンシング」という言葉が、ちょっぴり世を賑わしています。
〈HUFFPOST / 2023年2月19日〉
これは「影響を否定する」いう意味なのですが、海外のインフルエンサーの間ではオススメ商品ではなく「オススメしない商品」を紹介する投稿が増えているというのです。
一体全体どういうことなのでしょうか…?
ステルスマーケティングに対する厳しい目
実際、2023年初めに登場したこの言葉は「#deinfluencing」のタグで今や1億7000万回以上視聴されているのです。
発端は、とある美容インフルエンサーが、マスカラを紹介する際、ステルスマーケティングが行ったのではないかという疑惑。
ちなみに、ステルスマーケティングとは消費者に特定の商品やサービスについて、宣伝と気づかれないように商品を宣伝したり、商品に関する口コミを発信する行為のことです。
インフルエンサーはお金や商品の無料提供を受けてその商品をPRすることがありますが、その際はPRであることを明示しなければなりません。
企業案件の中には、このグレーゾーンをつく場合があるのですが、昨今、消費者の目はますます厳しくなってきています…
その証拠に、インフルエンサー・マーケティングのプラットフォーム「Room Unlocked」の調査によると、イギリス国民の60%が、ソーシャルメディア上でさまざまな商品を見せびらかすインフルエンサーを不快に感じているそうです。
また、64%が商業的な利益を追い求め信頼性に欠けるインフルエンサーに失望しているということも判明しているのです。
日本でもインフルエンサーマーケティングに対しては「騙されないぞ〜」というマインドが広がっているので、「何だか分かるな」と思う方は少なくないと思います。
一方で…、インフルエンサーの信頼を担保するためにデ・インフルエンシングが広がるのも、ダメ出しされた企業としては辛いわけですが…、それだけ消費者は「真実」を求めているという表れとも言えるでしょう。
発信者に必要な「謙虚な心」
やはり発信者として忘れてはいけないのは「謙虚さ」です。
このデ・インフルエンシングを取り扱った別の記事でも、そのことを強調しています。
〈DIGIDAY / 2023年2月13日〉
あるクリエイティブエージェンシーのストラテジーディレクターはこのように語ります。
つまり、消費者は十人十色の価値観を持ち、そして皆、賢い。
安易な発信をしてしまうと当たり前ですが、火傷してしまいます…
ブランドが主張する内容が、少しでも嘘くさいと感じられれば、消費者たちはすぐに見極め、離れてしまう…
DIGIDAYの記事では、チョコレートブランドのM&M’sの事例も取り上げています。
同社ではマスコットキャラクターをインクルーシブにしようとしたのですが、消費者からこのことが単に注目を集めるためのスタント広告なのではないかと反発があったのです。
実際、この一連の動きは全てスーパーボウル広告計画の一環であることが明らかになり、同社のブランドイメージに大きな傷がつくことになりました。
最近はエコ関連でも「グリーンウォッシュ(環境配慮をしているように装いごまかすこと)」という言葉がよく聞かれるように、企業の「世のため人のため」宣言は、中身が伴ってなければ、厳しい指摘を受ける時代です。
こういった事例からも、企業は改めて消費者に対して正直で、謙虚な姿勢を持つことが必要ですね。
ブランディングの「本質」
冒頭のインフルエンサーマーケティングに話を戻しますと、企業がインフルエンサーを起用する目的は、当たり前ですが商品のイメージアップにあります。
それは時に「ブランディング」と表現される場合があるのですが、その考えに待ったをかける方がいらっしゃいます。
ブランディングプロデューサーで、株式会社パラドックス執行役員の鈴木祐介さんです。
〈東洋経済オンライン / 2023年2月20日〉
もちろん、イメージアップは結果として手に入れらることはあっても本質ではないと。
鈴木さんは、ブランディングとは「志を明確にすること」にあると語ります。
もっと言えば「良い経営そのもの」というわけです。
志を日々体現していくことに本質があるというわけです。
社会にどう役立つのか、つまり何を目的として生まれた企業なのかという志を明確にして、その志を実行していくこと。
いくら外面をよく見せても、中身が伴っていなければいつかメッキは剥がれてしまうというわけです…
志を持って誠実に消費者と対話する
もちろん、インフルエンサーとのコラボは、それ自体はもちろん有効的な手法だとは思いますが、あくまでも企業の「内実」の部分が重要になります。
という確信があってこそ、インフルエンサーのオススメが力になっていくのです。
インフルエンサーは企業と消費者のあくまでもキューピット役。
人間でもそうですが、恋のキューピットをしようにも、相談者に魅力がなければ成就することは難しい…
企業も、とりあえず人気インフルエンサーの力を使って…と安易に考えてしまうと「嘘くさい」と思われれば、意味がないどころかマイナスになってしまうということを改めて認識しておきたいところです。
インフルエンサーは消費者のそういった懐疑心に敏感に反応してデ・インフルエンシングに注力している状態にあるのでしょう…
企業側も、そういった消費者のムードを察知して、正しいインフルエンサーマーケティングを仕掛けていくことが賢明かと思います…(汗)
いずれにせよ志を持って、それが消費者にとって本当に有益な商品ならば、デ・インフルエンシングの対象にはならないはずです。
私もこの言葉を大事にして、今後もマーケティング活動を行っていきたいと思います。
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