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「時間」が売れる時代
vol.1390
費やした時間に対する満足度や効果の度合いを重視する「タイパ」の時代ですが、海外でも、その傾向が進んでいるようです。
そこで注目されているのが、代行業。
アメリカの『TheFutureParty』の記事によれば、代行サービスを提供するプラットフォーム「TaskRabbit」では、2023年11月と12月における行列代行サービスの利用が、前年同月比で18%増加しています。
〈TABI LABO / 2025年2月18日〉
ちなみに、行列代行サービスの平均時給は27ドル(約4,000円)。
都市部を中心に、需要は高まっているとのことです。
行列代行が人気に
タビラボの記事に
「早朝から整理券を求めて並ぶ必要がある場合や、悪天候の中で長時間待たなければならない場合などは、体力的・時間的な負担が大きい。しかし、行列代行サービスを利用すれば、貴重な時間を有効活用することができる」
と書いていますが、確かに寒い冬、酷暑の夏に並ぶのは大変です。
特にご高齢の方は、かなり体力が奪われるでしょう。
そう考えると、並んでいる時間だけではなく、体力消耗した後のリカバリーを含めるとタイパが悪いというのはよく分かります…
代わりに並んでくれる人がいれば、お願いするというのは合理的な選択なのかもしれません。
また、新しいゲームや最新機器の発売日では、前日から一晩並ぶ光景も見られます。
これも、ご高齢の方からすると
「孫のためにいち早く買ってあげたいが、並ぶのは無理…」
ということになりますので、利用したいと思う方も多いでしょう。
日本でも、行列代行業は人気になるかもしれない🤔
そう考えて調べてみたら、すでに多くの行列代行業が存在しています。
むしろ、今は本当に多種多様な代行業があるのですね。
例えば、謝罪代行、愚痴聞き代行、お買い物付き添い、ボディガード代行、話し合いの立会代行などなど。
さらには、合コン代行なんてものもあるようです…(驚)
「合コンをセッティングしたが、急遽友人がこれなくなってしまったので、代わりに来て人数合わせをして欲しい」
というニーズがあるとのこと…🤔
あと、個人的に気になったのが「COO代行」です。
〈日刊ゲンダイ / 2025年5月19日〉
経営も「代行」する時代?
このユニークな職業を立ち上げ、年商1億円を超える稼ぎを得ている信國大輔さんは、これまで100社以上のCOO代行実績を持ち、中には上場に導いていた会社もあるそうです。
業務内容は、ベンチャー企業や中小企業に入り込み、経営者の右腕として会社経営全般を支援する仕事。
一般的な経営コンサルは外部の立場からアドバイスを行いますが、COO代行は内部の人間として経営課題の解決にあたるという違いがあります。
マーケティングや営業、人事、財務など幅広い分野の知見を持ち、経営者と一緒に問題解決に取り組む。
COO代行が求められる背景には、ベンチャー企業や中小企業の人材不足があります。
限られたリソースでも成果を出すには、経営者の構想を具現化し、組織を動かすCOO的存在が欠かせないですが、最適な人材を見つけるのは簡単ではありません。
さらに、地方はより深刻です。
信國さんも
「いわゆる番頭がいないんです。社長が営業も人事も財務も全部抱えている。そうすると、どうしても専門性が偏るし、客観的な助言をしてくれる相手もいない。社長の悩みを聞き、時に進言し、時に実務を引き取る。それがCOO代行の役割ですね」
と、代行の必要性を説明しています。
こちらも経営者からすれば、経営課題の解決をCOO代行に集中的に行ってもらうことで、効率的に物事を進められる。
これまで単なる助言だけではなく、企業の方々と一緒に問題解決してきた私としては、非常に興味がそそられる仕事内容です😊
老若男女「時間を買いたい」
…個人的な話は置いておいて、代行業の隆盛は、昨日の日本経済新聞でも取り上げられていました。
〈日本経済新聞 / 2025年2月23日〉
若い人が頼む代行事例の1つとして取り上げているのが「退職代行」です。
これは、これまでも多くのメディアが取り上げてきましたが、その名の通り、会社を辞める際、自分では言わず、代行の力を借りるというもの。
「退職代行モームリ」では2024年の利用者が1万6205人と前の年の3.7倍となっています。
「退職の交渉を代行に頼むなんて、けしからん!」
と思う方もいて、賛否両論のサービスではありますが、…ただ、ブラックな企業の退職にあたっては、かなり大変なこともあるようで…、そこまで単純な話ではなさそうなのです…
それから、ご高齢の方のための代行事例として取り上げられていたのが「家族代行」。
これは、家族に代わって高齢の方の生活支援や入院時の身元保証、死亡時の手続きなどを代行するサービス。
一般社団法人LMNでは月に100件ほどの相談があるそうです。
これは、1年前から倍増した件数。
相談の8割が40〜50代からの依頼で、通院の付き添いなど親の日常生活のサポートが中心で、多くは親族が少なく、親の面倒が負担になり、相談する方が増えているようです。
あとは、親子関係が悪化しているケースも多い…
よく介護について、家族、親族で行うよりも、他者の方が良いと聞きますが、これも家族のカタチによっては必要なことなのだと思います。
SHIBUYA109 lab.の長田麻衣所長が若者の代行利用について「ストレス回避行動」と指摘し
「傷つきたくない、不要なストレスを避けたい」
という傾向を強く感じると仰っているのですが、実はこうした気持ちは若者だけではなく、全ての世代に通ずる時代のムードなのではないかと個人的には思っています。
さらに、ポジティブに考えれば、24時間という限られた時間という資源に対して「何に時間をかけるのか」ということを、より自由に決めていきたいという時代の声なのかもしれません。
忙しい最中でも「料理が好き」という人にとっては料理はストレス解消になるかもしれませんが、「料理が苦手…」という人からすれば負担になる。
共働き世帯が増える中、両親2人で何でも全部抱えるというのは難しく、家事の選択と集中も必要になっていくような気がします。
また、副業を考えている人からすれば、代行業が活性化すれば、自分の得意なこと、好きなことで稼ぐことができる。
これまでは普段の家事から行列に並ぶことまで、自分のことは全て自分でやらないといけませんでしたが
「料理はするけど、洗濯はしない」
とか
「行列にはスマホゲームをしながら並ぶけど、買い物は面倒臭い」
というような多様なニーズがあることを考えて、得意なこと・許容できることで副業し、苦手なことはアウトソーシングするという、画一的ではない、多様な時間の過ごし方が、ますます見られるような気がしています。
良いかどうかは別として、今後も代行業には注目していきたいと思います🫡
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!