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「四則演算」で個性を生む

column vol.1260

若者に人気の「クレーンゲーム」、皆さんどこでやるものかご存知でしょうか?

えっっ…??ゲームセンターでしょ…?

はい!その通りです、正解です!

ただ、実は最近もっと身近な場所で楽しめるようになったのをご存知でしょうか?

正解は、「ローソン」です。

〈流通ニュース / 2024年8月6日〉

全国でアミューズメント施設「タイトーステーション」を展開するタイトーは、今年4月1日からクレームゲーム機を同店で設置開始

7月末の時点で国内623店舗に広がっています。

コンビニに行くのが、もっとワクワクする。

そんな新しい魅力をローソンと共に発信しているのです。

何でもオンラインで買える世の中において、小売は「実店舗に訪れる価値」を生み出すことに知恵を絞っています。

そうした中、いかに売り場に「個性」を出していくのかが勝負になっている。

今日は、そんな努力が垣間見える3つの事例をご紹介したいと思います。

ぜひ最後までお付き合いくださいませ。


「絞って」特徴化

「個性を出す」といえば、ブランディングが頭に浮かびますが、ブランディングの肝は何といっても「引き算」が重要になります。

本質を見極め、優先順位の低いものを削ぎ落とすことで、一番大切な魅力(価値)が浮かび上がってくる。

例えば、一人の男性がいたとして、その方の背景について

横浜市在住/学生時代はバドミントン部/法政大学出身/プログラマー/ヤクルトスワローズファン/愛車はフォルクスワーゲン/男三兄弟の末っ子/27歳/栃木出身/ワインソムリエの資格あり/猫3匹と住む/独身/一人暮らし/ストレス解消はカラオケ/大のラーメン好き/年に一度はアジア圏に旅行/株式投資を勉強中/TOEIC730点

という情報を得た時、どんな方を想像するでしょうか?

…まず、読むのも大変ですよね…?

一方、本人が「一番自分を表していること」として

猫3匹と住む

を挙げてくれたら、いかがでしょうか?

猫3匹ということは、動物好きの優しい人かな?面倒見の良い人かな?

など、イメージしやすくなりませんか?

それは人だけではなく、売り場も同じです。

創業120周年を迎えた銀座伊東屋は、2015年のリニューアルの際、商品数を3分の1に減らして特徴化したことがあります。

〈東洋経済オンライン / 2024年7月18日〉

「伊東屋らしさ」を追究し、ミッション、バリュー、ビジョンを設定。

「気に入ったもの、センスのいいものを長く大切に使い続ける」という価値観という基準で商品を絞り込んでいったのです。

品揃えの面でも、らしさを伝えていく。

この時のリニューアルは、業界全体でヒントになったことを覚えています。

「任せて」特徴化

「引く」という判断は、得意な人に“任せて引く”という考えも当てはまります。

例えば、最近話題のイトーヨーカ堂「FOUND GOOD(ファウンドグッド)」が、その好事例でしょう。

〈ITmedia ビジネスオンライン / 2024年5月28日〉

ヨーカ堂といえば、昨年3月自前でのアパレル事業から撤退すると発表しましたが、その代わりに登場した「FOUND GOOD」人気アパレルブランドを次々と誕生させているアパレル大手「アダストリア」がプロデュース。

今年2月に先行導入したイトーヨーカドー木場店を皮切りに、7月までに60店舗以上展開しています。

そして、高齢化する顧客の若返りをはかり、30代、40代の人たちに今まで以上に来てもらえるよう、食品売り場もテコ入れ

凍食品、総菜を強化するなど品揃えを見直して、買い回りが起こるような波及効果を狙ったのです。

すると木場店では、4月24日の時点でアパレルの客数は改装前に比べて40%増

しかも新規客12.4%増えています。

さらに、アパレル食品両方とも買った顧客82%に上ったとのこと。

インスタグラムを使った販売促進ZOZOTOWNでのネット通販効果も上々で、狙い通り店舗全般が活性化しているそうです。

今後はセブンイレブンヨーカ堂を組み合わせた新業態「SIPストア」にも展開。

「FOUND GOOD」旋風がますます巻き起こっていきそうです。

このように「任せて引く」ことで、売り場に個性が生まれる

そんな好事例なのではないでしょうか😊

「組み合わせて」特徴化

2つの事例が「引く」だったので、最後は「足す」事例を1つお届けして話を締めくくりたいと思います。

「足し算」の売り場としてご紹介したいのが「ミスタードーナツ」

小売業界の中でも快進撃を続けていることで有名です。

〈日刊SPA! / 2024年7月25日〉

ミスドを手掛けるダスキンのフードグループの2024年3月期の売上高584億円セグメント利益69億円

2割の増収3割近い営業増益でした。

セグメント利益率11.8%

日本マクドナルドホールディングスの2023年12月期の営業利益率10.7%

何と絶好調のマクドナルドを上回ったのです。

ちなみに、ケンタッキーフライドチキンの日本KFCホールディングスの営業利益率3.6%

すき家のゼンショーホールディングスが5.6%で、丸亀製麺のトリドールホールディングスが5.0%

好調と言われる数々の外食企業でも利益率が10%を超えるのは稀であり、ミスドの好調ぶりが窺えますね。

同店の好調の理由は3つあります。

(1)認知度の高さ
(2)自分用とお土産用という2つの需要を獲得
(3)代替ブランドがないこと

SPA!の記事を寄稿したフリーライターの不破聡さん

ちょっとした食事や休憩であれば、ハンバーガーショップなどのファーストフード店カフェチェーンなどを想起する人が多いでしょう。家族や友人などに手軽なお土産を買おうと思えば、「BAKE」のチーズケーキや、「ビアードパパ」のシュークリームを思い浮かべるかもしれません。  
ミスタードーナツはこの2つの需要を満たすブランドになっています。つまり、その代わりになる競合ブランドが欠けているのです」

と解説。

確かに

「ちょっとした食事や休憩」+「手軽なお土産」

という2つの需要を押さえているチェーン店というのはミスドの特徴だと言えますね。

このように足し算によって競争優位性を生み出していくというのも特徴化戦略には非常に重要な視点になるでしょう。

これは「掛け算」「割り算」で考えることもできます。

つまり、「四則演算」ブランディングです。

…ただし、どれも明確な意図があってこそ特徴が明確になるもの。

まずは、伊東屋のように「らしさ」を考えいくことが肝要になるでしょう😊

本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!


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