4月27日は「哲学の日」なのだそうだ
ソクラテスが魂の不死を論じて毒ニンジンを呷って刑に服した日とするのだそうだが、根拠は分からない。ソクラテスの裁判から死刑が確定したが、アテナイ人の祭りの期間にさしかかり、その間は死刑は執行できないということで、クセノポンの言及によりそれが30日間伸ばされたらしいという辺りから、誰かが計算したのかもしれない。
また、ソクラテスの妻クサンティッペが悪妻とされることから「悪妻の日」ともされるそうだが、少なくとも対話篇の中で、クサンティッペの名が登場することはあるものの、悪妻であることをにおわせるような表現は全くないと言ってよい。俗説がネットで思いこみで無反省にコピーされている好例であると言えようか。
しかし祭りで死刑が伸ばされたソクラテスと、祭りで死刑が早められたイエスと、祭り絡みというのには、西洋思想の2つの源流の奇妙なつながりが感じられる。さらに、ソクラテスの死とキリストの死とがそれらの文明の根底にあるのは、怒りの文化であるなどと理解して、自分の思想たる日本学の提唱へと展開した哲学者・梅原猛氏を思い出す。後にはマスコミや政治家とうまく付き合い、若いころの反骨精神とは全く違ってしまったが、当初ブームを起こしたほどには、その哲学は覚えられていないような気がする。
しかしソクラテスもイエスも、誰もが忘れることができないような、世界への影響を与え続けていることを、改めて思うものである。
なんだか宣伝だけの頁なのだが、生きのいい本が並んでいるので、岩波書店の哲学コーナーをリンクさせておくことにしよう。
https://www.iwanami.co.jp/news/n18998.html