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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2024年12月の記事一覧

『翻訳教室 はじめの一歩』(鴻巣友季子・ちくま文庫)

『翻訳教室 はじめの一歩』(鴻巣友季子・ちくま文庫)

NHKの「ようこそ先輩 課外授業」で2012年2月に放映されたものを基にして、翻訳家である著者が行った授業が、ここに再現されている。もちろん、背景や解説が加えられているが、子どもたちの様子が、臨場感を以て掲載されていて、実に微笑ましい。
 
だが、これは子どもたち云々という問題ではない。実に大人へ向けてのメッセージである。子どもたちの、既成概念に囚われない発想をここに示すことで、本書は、へたにただ

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『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳』(メアリアン・ウルフ・大田直子訳・インターシフト)

『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳』(メアリアン・ウルフ・大田直子訳・インターシフト)

マーゴット・マレク賞受賞作『プルーストとイカ』で知られた著者が、その続編として著したのが、本書である。私は、『プルーストとイカ』を読み、続いて本書を読んだ。この順番でよかったと思う。前者は、読書と脳についての、科学的な立場からの叙述であり、さらに教育への懸念や対処を扱っていた。ひとつのは、教育という動機があっての研究であったのだろうと思われる。後者は、そこから時代的に、さらにデジタル読書という形が

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日々のコミックス始める

日々のコミックス始める

仕事から帰り、軽い食事をする。炭水化物は極力避けたもの。日記をまとめ、メールの整理をする。原稿になる文章を認めもする。あとは、本を読む。一日に十冊弱の本を開き、ちびちびと読み進めているが、そのうちの二冊は、この就寝前の時間に読む。しばしば説教集をこのために用意している。いまは、大木英夫先生のローマ書と、加藤常昭先生のマルコ伝からの説教集である。
 
と、これで一日が終わるのがこれまでだったが、最近

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『待ちつつ急ぎつつ キリスト教講話集Ⅳ』(井上良雄・新教出版社)

『待ちつつ急ぎつつ キリスト教講話集Ⅳ』(井上良雄・新教出版社)

タイトルは、同じ著者がブルームハルト父子について書いた評伝のタイトルにも使われていた。しかしこちらは、著者自身の講演である。時に説教という形ででも語ったという著者であるが、修養会や神学校での講演なども多いことから、「講話集」として集められたものの第4巻であるという。「新教新書」という形で、新書の体裁で出されているが、285頁まで書かれているボリュームのため、価格にも納得である。
 
井上良雄氏は、

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『森に願いを』(乾ルカ・実業之日本社)

『森に願いを』(乾ルカ・実業之日本社)

国語の教材で、心に留る物語に出会った。作者は「乾ルカ」と書いてある。エリートぶった少年の心理がよく描かれていたし、その友人が、子どもらしくなく鋭く少年の心理を見抜く様がよかった。それも、ストレスなく分かりやすい描写で、好感がもてた。
 
私はこういうきっかけで、作家と出会うことがある。国語の問題文は、いわばお試し読みの場となり、魅力を覚えたら、その本やその作家の別の本へ、首を突っ込んでしまうのだ。

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