
スッタニパータ 第2章『田を耕すバーラドヴァージャ』Kasibhāradvājasuttaṃ(カシバールアドヴァージャ・スッタ)
原文
「Atha kho kasibhāradvājo brāhmaṇo mahatiyā kaṃsapātiyā pāyasaṃ [pāyāsaṃ (sabbattha)] vaḍḍhetvā bhagavato upanāmesi –
‘‘bhuñjatu bhavaṃ gotamo pāyasaṃ. Kassako bhavaṃ; yaṃ hi bhavaṃ gotamo amatapphalaṃ [amatapphalampi (saṃ. ni. 1.197)] kasiṃ kasatī’’ti.
訳
「すると、カシバールアドヴァージャのバラモンは、
大きな金の鉢に満たした乳粥を用意し、
世尊(ゴータマ)に差し出して言った。
『ゴータマよ、この乳粥を召し上がってください。
あなたは耕作をする者である。
あなたが耕す田は、不死の果実をもたらすのだから。』」
話の背景
カシバールアドヴァージャは、仏陀の言葉を理解し、
彼が説く修行の道こそが真の耕作であると認識した。
その感謝の意として、彼は乳粥を捧げ、
仏陀を「耕作をする者」として認めた。
ここでの「不死の果実」とは、涅槃(悟り)を指している。
注釈・補足
「大きな金の鉢に満たした乳粥を用意し(Mahatiyā kaṃsapātiyā pāyasaṃ vaḍḍhetvā)」
「Mahatiyā(マハティヤー)」 は「大きな」、
「kaṃsapātiyā(カンサパーティヤー)」 は「金の鉢に」、
「pāyasaṃ(パーヤサン)」 は「乳粥」、
「vaḍḍhetvā(ヴァッダヘットヴァー)」 は「満たして、増やして」。
バラモンは、敬意を込めて乳粥をたっぷりと用意した。
「ゴータマよ、この乳粥を召し上がってください(Bhuñjatu bhavaṃ gotamo pāyasaṃ)」
「Bhuñjatu(ブンジャトゥ)」 は「召し上がれ」、
「bhavaṃ gotamo(バヴァン ゴータモ)」 は「尊敬するゴータマよ」、
「pāyasaṃ(パーヤサン)」 は「乳粥」。
仏陀の修行に対する理解と尊敬の念が込められている。
「あなたは耕作をする者である(Kassako bhavaṃ)」
「Kassako(カッサコー)」 は「農夫、耕す者」、
「bhavaṃ(バヴァン)」 は「あなた(敬称)」。
仏陀の「精神的な耕作」を認める言葉。
「あなたが耕す田は、不死の果実をもたらす(Yaṃ hi bhavaṃ gotamo amatapphalaṃ kasiṃ kasatī)」
「Yaṃ(ヤン)」 は「~であるもの」、
「hi(ヒ)」 は「まさに」、
「bhavaṃ gotamo(バヴァン ゴータモ)」 は「尊敬するゴータマよ」、
「amatapphalaṃ(アマタッパラン)」 は「不死の果実(涅槃)」、
「kasiṃ kasatī(カシン カサティ)」 は「耕作をする」。
仏陀の修行が、死を超越した悟りの境地へと至る道であることが示されている。