『眼の探求』 辺見庸
はじめに(抜粋)
私は「解像」ということを考えた。私たちの周りの、一見して心安くも見える風景の解像、である。心安く見えながら、視線を針の先のようにとがらせれば、また視線と想像力の射程をぐいと伸ばせれば、不景気とはいえまだ美し余の風景の深みには、怪しく不気味にうごうごとするものがおぼろげながら見えてくる。しかも、そのうごうごとする謎めいたものは、近年、人知れず増殖に増殖をつづけているようだ。それを。年とともの衰弱はしているけれど、わが両眼に探索させ、知覚させ、思念させて、持て