
スッタニパータ 第1章『チュンダ』Cundasuttaṃ(チュンダ・スッタ)第87偈
原文
「Paramaṃ paramanti yodha ñatvā, akkhāti vibhajate idheva dhammaṃ;
Taṃ kaṅkhachidaṃ muniṃ anejaṃ, dutiyaṃ bhikkhunamāhu maggadesiṃ.」
訳
仏陀が答えた。
「最上のもの(涅槃)を最上と悟り、
それを説き、ここで法を明らかにする者。
疑念を断ち切り、動揺することなく、
安らぎを得た聖者。
このような者をこそ、仏陀は
『道を説く者(マッガデーシン)』と呼ぶ。」
話の背景
仏陀は、「道を説く者(マッガデーシン)」 の特徴について述べる。
彼らは、涅槃という究極の目標を正しく理解し、
それを人々に説いて明らかにする者 である。
この偈は、仏陀自身や偉大な師たちの役割を明示するもの となっている。
注釈・補足
「最上のもの(涅槃)を最上と悟り(Paramaṃ paramanti yodha ñatvā)」
「Paramaṃ(パラマン)」 は「最上のもの(涅槃)」、
「paramanti(パラマンティ)」 は「最上と見なす」、
「yodha(ヨーダ)」 は「その者」、
「ñatvā(ニャトヴァ)」 は「悟った」。
涅槃を究極の安らぎと理解すること が、真の修行者の条件である。
「それを説き、ここで法を明らかにする者(Akkhāti vibhajate idheva dhammaṃ)」
「Akkhāti(アッカーティ)」 は「説く」、
「vibhajate(ヴィバジャテ)」 は「明らかにする」、
「idheva(イデーヴァ)」 は「ここで(仏法の中で)」、
「dhammaṃ(ダンマン)」 は「法」。
正しい道を説き、それを他者に教える者こそが「道を説く者」 である。
「疑念を断ち切り、動揺することなく(Taṃ kaṅkhachidaṃ muniṃ anejaṃ)」
「Kaṅkhachidaṃ(カンカチダン)」 は「疑念を断ち切った者」、
「muniṃ(ムニン)」 は「聖者」、
「anejaṃ(アネージャン)」 は「動揺しない、揺るがない」。
真理を悟った者は、もはや疑念を抱くことなく、心が揺れ動くこともない。
「このような者をこそ、仏陀は『道を説く者』と呼ぶ(Dutiyaṃ bhikkhunamāhu maggadesiṃ)」
「Dutiyaṃ(ドゥティヤン)」 は「第二の(ここでは『二番目の種類の修行者』を指す)」、
「bhikkhunamāhu(ビックフナマーフ)」 は「彼を比丘と呼ぶ」、
「maggadesiṃ(マッガデーシン)」 は「道を説く者」。
仏陀は、涅槃を悟り、それを説く者を**「道を説く者」** と認めている。