
スッタニパータ 第1章『田を耕すバーラドヴァージャ』Kasibhāradvājasuttaṃ(カシバールアドヴァージャ・スッタ)
原文
「Atha kho kasibhāradvājo brāhmaṇo saṃviggo lomahaṭṭhajāto yena bhagavā tenupasaṅkami;
upasaṅkamitvā bhagavato pādesu sirasā nipatitvā bhagavantaṃ etadavoca –
‘abhikkantaṃ, bho gotama, abhikkantaṃ, bho gotama!
Seyyathāpi, bho gotama, nikkujjitaṃ vā ukkujjeyya,
paṭicchannaṃ vā vivareyya, mūḷhassa vā maggaṃ ācikkheyya,
andhakāre vā telapajjotaṃ dhāreyya, cakkhumanto rūpāni dakkhantīti;
evamevaṃ bhotā gotamena anekapariyāyena dhammo pakāsito.
Esāhaṃ bhavantaṃ gotamaṃ saraṇaṃ gacchāmi dhammañca bhikkhusaṅghañca,
labheyyāhaṃ bhoto gotamassa santike pabbajjaṃ, labheyyaṃ upasampada’’nti.
訳
**「すると、カシバールアドヴァージャのバラモンは、
強い感動に打たれ、体の毛が逆立つほどの驚きを感じた。
そして仏陀のもとへ歩み寄り、
仏陀の足元に頭をつけて礼拝し、こう言った。
『素晴らしいことです、尊きゴータマよ!
まるで、覆されていたものを元に戻すように、
隠されていたものを明らかにするように、
道に迷った者に正しい道を示すように、
闇の中で灯火を掲げ、
目のある者が物を見られるようにするように、
あなたは多くの方法によって法を説かれました。
私は、尊きゴータマよ、
仏陀と法と僧団に帰依いたします。
どうか、私に出家と受戒をお許しください。』」**
話の背景
カシバールアドヴァージャは、仏陀の教えを聞いて深く感銘を受け、
自らの誤った信念が覆され、真理を悟る機会を得たと感じた。
その結果、彼は仏陀に帰依し、出家を願い出る。
この偈は、悟りを得ることの歓喜と、
仏陀の教えが真実を明らかにする力を持つことを示している。
注釈・補足
「強い感動に打たれ、体の毛が逆立つほどの驚きを感じた(Saṃviggo lomahaṭṭhajāto)」
「Saṃviggo(サンヴィッゴ)」 は「感動し、震える」、
「lomahaṭṭhajāto(ローマハッタジャートー)」 は「毛が逆立つほどの驚き」。
深い感銘を受けたことを示している。
「まるで、覆されていたものを元に戻すように(Seyyathāpi, bho gotama, nikkujjitaṃ vā ukkujjeyya)」
「Seyyathāpi(セーヤターピ)」 は「まるで~のように」、
「nikkujjitaṃ(ニックッジタン)」 は「覆されたもの」、
「ukkujjeyya(ウックッジェーヤ)」 は「元に戻す」。
誤った見解を正すことの比喩。
「道に迷った者に正しい道を示すように(Mūḷhassa vā maggaṃ ācikkheyya)」
「Mūḷhassa(ムールハッサ)」 は「迷った者」、
「maggaṃ(マッガン)」 は「道」、
「ācikkheyya(アーチッケーヤ)」 は「示す、教える」。
真理を求める者に正しい教えを示すことを意味する。
「闇の中で灯火を掲げ(Andhakāre vā telapajjotaṃ dhāreyya)」
「Andhakāre(アンダカーラ)」 は「闇」、
「telapajjotaṃ(テーラパッジョータン)」 は「油灯」、
「dhāreyya(ダーリェーヤ)」 は「掲げる」。
仏陀の教えが、闇を照らす光のようであることを示す。
「仏陀と法と僧団に帰依いたします(Esāhaṃ bhavantaṃ gotamaṃ saraṇaṃ gacchāmi dhammañca bhikkhusaṅghañca)」
「Esāhaṃ(エーサーハン)」 は「私は」、
「saraṇaṃ gacchāmi(サラナン ガッチャーミ)」 は「帰依する」、
「dhammañca(ダンマンチャ)」 は「法にも」、
「bhikkhusaṅghañca(ビックフサンガンチャ)」 は「僧団にも」。
仏・法・僧の三宝への帰依を宣言する。
「どうか、私に出家と受戒をお許しください(Labheyyāhaṃ bhoto gotamassa santike pabbajjaṃ, labheyyaṃ upasampada)」
「Labheyyāhaṃ(ラッベーヤーハン)」 は「私に許してください」、
「pabbajjaṃ(パッバッジャー)」 は「出家」、
「upasampada(ウパサンパダー)」 は「受戒」。
修行者として仏陀の教えを受ける決意を表している。