
スッタニパータ 第1章『田を耕すバーラドヴァージャ』Kasibhāradvājasuttaṃ(カシバールアドヴァージャ・スッタ)第82偈
原文
「Aññena ca kevalinaṃ mahesiṃ, khīṇāsavaṃ kukkuccavūpasantaṃ;
Annena pānena upaṭṭhahassu, khettaṃ hi taṃ puññapekkhassa hotī’’ti.」
訳
「別の者に捧げなさい、完全なる聖者、
煩悩を断ち切り、不安を鎮めた賢者に。
食べ物や飲み物をもって供養しなさい。
それは、功徳を求める者にとっての
福田(功徳を生む場)となるのだから。」
話の背景
仏陀は、バラモンのカシバールアドヴァージャからの乳粥の供養を辞退し、
供養する相手として「完全なる聖者(解脱した者)」を勧めている。
この偈では、供養の本質が、煩悩を断ち切り、修行を完成させた者へ向けられるべき
であることが説かれている。
注釈・補足
「別の者に捧げなさい、完全なる聖者(Aññena ca kevalinaṃ mahesiṃ)」
「Aññena(アンニェーナ)」 は「別の者に」、
「kevalinaṃ(ケーヴァリナン)」 は「完全なる者、聖者」、
「mahesiṃ(マヘーシン)」 は「大賢者」。
仏陀は、供養の対象が適切であるべきことを示している。
「煩悩を断ち切り、不安を鎮めた賢者に(Khīṇāsavaṃ kukkuccavūpasantaṃ)」
「Khīṇāsavaṃ(キーナーサヴァン)」 は「煩悩を断ち切った者」、
「kukkuccavūpasantaṃ(クックッチャヴーパサンタン)」 は「不安を鎮めた者」。
修行を完成させ、心の乱れを超越した者が供養に値することを示す。
「食べ物や飲み物をもって供養しなさい(Annena pānena upaṭṭhahassu)」
「Annena(アンネーナ)」 は「食べ物」、
「pānena(パーネーナ)」 は「飲み物」、
「upaṭṭhahassu(ウパッタハッス)」 は「供養しなさい」。
修行を成し遂げた者へ供養することで、功徳が積まれる。
「それは、功徳を求める者にとっての福田となる(Khettaṃ hi taṃ puññapekkhassa hotī)」
「Khettaṃ(ケッタン)」 は「田畑、福田」、
「puññapekkhassa(プンニャペッカッサ)」 は「功徳を求める者にとって」、
「hotī(ホーティ)」 は「~となる」。
供養の対象が正しければ、施しの功徳が確実に実を結ぶことが示されている。