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【自分史】ハニー
honey(名詞)
①蜂蜜、甘美なもの
②恋人、愛する人、かわいい人
③あなた、君
◆愛する人への呼びかけ。
◆恋人や、夫、妻に対して使われるが、たまに親が子どもを呼ぶときに使うこともある。
④素晴らしい物[人]
2011年秋。
私はアメリカ合衆国に降り立った。
大学3年次のことである。
大学時代、私は国際コミュニケーション学科で学んでいた。
その学科では必ず3年次にアメリカへ留学することになっていた。
選択肢はカリフォルニア州サンディエゴ、またはペンシルバニア州フィラデルフィア。
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サンディエゴの場合はホームステイ。
フィラデルフィアの場合は学生寮。
私は迷わずフィラデルフィアを選んだ。
フィラデルフィアを選んだ他の数名と一緒にペンシルベニア大学の語学部で、約10ヶ月間学ぶことになった。
ペンシルベニア大学はアメリカでは非常に有名な大学らしい。
名門校らしくとても大きな図書館があった。
今日はその図書館での話だ。
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私はそこそこ英語ができた。
ただし筆記・読解に限って。
リスニングは苦手だし、会話にいたってはNO、ダメ、イヤ。
そんな私は、せっかくアメリカにいるのに現地人とは交流せず、図書館にばかり入り浸っていた。
図書館では課題をするか、DVDを借りるか。
ペンシルベニア大学の図書館はDVDも置いており、アニメや映画が観れた。
私のお気に入りは『トムとジェリー』。
ほとんど会話が無いし、あってもごく簡単なものだけだから。
日本でも観ていたし、郷愁に浸りやすかった。
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その日もトムジェリのDVDを借りに図書館を訪れた。
秋も深まり、ほとんど冬といっていい季節。
夜が間近に迫った時間帯だった。
図書館の入り口には警備員が2人、常時立っていた。
すれ違うだけの関係性。
ひと言もしゃべったことはない。
でもその日は違った。
「Have a nice day, honey.」
(いい一日を、お嬢さん)
初めて声をかけられた!
「ハニー」って呼ばれた!!
「て、テンキュー、ユートゥー」
動揺のあまりカタカナ英語しか返せなかった。
それでも、挨拶をしてくれた女性警備員はニッコリと笑っていた。
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「ハニー」って恋人以外にも使うんだ・・・
映画だけじゃなくて、実際に使うんだ・・・
今後の人生で使わなそうな単語。
キラキラ輝く甘い響き。
後から知ったのだが、
ネイティブ的にはただの語尾だという。
彼女もなんの意味もなく使ったのだろう。
それでも、人生でたった一度の「ハニー」。
あの日の暖かさのまま、心の宝箱で輝き続けている。
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