「光る君へ」第39回「とだえぬ絆」親子の物語
彰子さまに第二皇子誕生から始まった第39回。
まひろは、源氏物語の構想を練っているのか、宿世とつぶやく。
「宿世」ということばは。源氏物語に何度も出てくるのである。
場面は、藤原為時邸へ。道長から正月用の賜り物に加えて、賢子の裳着の祝いの品も届いている。
ここで惟規によって、為時に賢子の父が道長であることが伝えられる。
そうか、気づいていなかったのか。
気づいていないと言えば、道長もまた気づいていないようだ。
どうして男たちはこんなに鈍いのか。
ちなみに、賢子を懐妊したことがわかったのが、第27回「宿縁の命」。
宿縁とは前世からの因縁、宿世の縁。
つまり、まひろと道長は前世からの因縁があって、その結果として賢子が生まれたという考え方なのである。
ここにも宿世という思想がある。
まひろが今、執筆しているのは、源氏物語第二部の始まりである若菜の巻。
光源氏は、兄の朱雀帝に頼まれ、朱雀帝の愛娘、女三の宮を正妻に迎える。光源氏40歳、女三宮14歳のことである。
この女三の宮をずっと慕っていた柏木が、源氏の留守を見計らって女三の宮と密通する。そしてなんと女三の宮は懐妊してしまうのだった。
光源氏がなんと自分の妻を寝取られるという衝撃の展開。
まひろのモノローグは、それを知った光源氏の嘆きの言葉だ。
実はこれは、源氏自身が父の桐壺帝にした仕打ち(藤壺宮と密通し、冷泉帝が生まれる)と同じことが繰り返されている。
自分の罪がそっくりそのまま自らに跳ね返ってくる。
まひろが以前、罪と罰、と書いていたのはこのことなのだった。
まひろと道長の密通によって生まれた賢子。
光源氏と藤壺宮の密通によって生まれた冷泉帝。
女三の宮と柏木の密通によって生まれた薫。
冷泉帝も薫も、自らに出生の秘密に心を悩ませる。
現実の世界と物語の世界が幾重にも重なっていく。
賢子はこれから大丈夫なのだろうか。惟規じゃないけど、心配だ。
ちょっとわかりにくいので、NHK公式さんの相関図からお写真を拝借。
道長の孫、敦成親王にたどり着くまでこれだけの方々がいらっしゃる。
単純に一人10年帝位に就いていたとして30年。道のりは長い。
相変わらずの呑気な口調だが、これが本音だとその場にいた全員が悟る。
そして悟ったからには、その実現のために働かなければならない。もはや左大臣道長はそういう立場の人間になってしまったのだから。
なんともいやらしいぞ、道長。いつの間にそんな手を身につけたのか。
伊周亡き後、道長の邪魔をする貴族はいなくなった。
残すは一条天皇、そして敦康親王である。
敦康親王への道長の態度は、かつて姉の詮子が定子に見せた態度と似ているような気がする。自分の大切なものに無邪気に近づこうとする者への嫌悪とでも言おうか。源氏物語のせいにしているけれど、はやく元服させて彰子のもとから引き離してしまいたいのが見え見えである。
しかもご在所は竹三条宮だという。この竹三条宮、大内裏からも離れ、かなりみすぼらしいものだったらしい。
一条帝の「中宮の出産に紛れることなく、敦康の元服を世に示せる」という親心も全て無視する道長の傲慢さを感じずにはいられない。
なんだかんだで好きだった伊周、そしてもちろん大好きだった惟規。
二人がこの世を去ってしまった。
一条天皇のご様子もまた心配。
お父上の円融天皇の時みたいに、毒とか盛られてないよね。
伊周と道雅、惟規と為時。まひろと賢子。一条天皇と敦康親王。
そして、道長と彰子・妍子。
いろいろな親子の関係が描かれた回だった。
残すところあと二ヶ月。
この物語はどこに向かってゴールするのだろう。
道長はどんどん闇落ちしていくのか。
どうするまひろ。