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「光る君へ」第45回「はばたき」躍動するいのち
冒頭で四納言によって、「この世をば〜」の歌の解釈が披露される。
道長は皆の前で驕った歌を披露するような人となりではない。
私もそうだが、大河ドラマで歴史上の人物のイメージが作られていくので、これからは傲慢な道長というイメージが少しずつ変わっていくかもしれない。
一条天皇の第一皇子でありながら東宮になれなかった敦康親王は、そののち穏やかな人生を歩んでいたのだが、わずか21歳でお亡くなりになる。
道長によって、奪い尽くされた生涯であった。
ナレーションが胸に突き刺さる。
道隆の死後、中の関白家の人々の運命を考えれば当然の言葉なのだ。
一条天皇の愛だけを頼りに生きた定子、
道長を恨み尽くして死んでいった伊周。
一条天皇もまた敦康親王を東宮にという最期の望みも叶わなかった。
ドラマでは描かれなかったが、定子とともに土葬を道長に頼んでいたのに道長は火葬して、その後に忘れていた、と言ったというエピソードまである。
そして、この敦康親王。
幼くして母定子と死別し、父一条天皇も逝ってしまう。
道長にとっては、彰子に男子が生まれない時の保険としての存在。
だから彰子が敦成親王を産んだ後は掌を返したような対応だった。
彰子を慕う気持ちまで間違いを起こすのではと疑われ、引き離された。
道長よ、己がしたことの残酷さをわかっているのか。
物語はこれまで。
まひろは源氏の物語の最後の場面を描き、筆を置く。
宇治を舞台にした最後の10帖は宇治十帖と呼ばれる。
最終の帖は「夢浮橋」。
*あらすじ*
源氏の息子薫(実は女三の宮と柏木の間にできた不義の子)の妾である浮舟は、源氏の孫である匂宮とも関係を持ってしまう。
淡白で優柔不断な薫に対し、情熱的な匂宮。しだいに匂宮に惹かれていく浮舟だが、薫にこの事が露見し、浮舟は宇治川に身を投げ、死のうとする。
その後、横川の僧都に助けられ、出家した浮舟は、自分のもとに戻るようにという薫の手紙を拒むのだった。
と、ここで源氏の物語は唐突に終わる。
浮舟は受領階級の娘として描かれる。愛を求めて生きようとしたが、最終的には自らそれを拒み、仏の道に生きることを決める。
まひろもまた、道長との関係を終わらせ、新たな道を進もうとしている。
かつては現実の出来事がモチーフとなって物語が作られていたが、今となっては、物語の世界が現実世界のまひろの行動に影響を及ばしているようだ。
まひろの旅が始まる。行き先は須磨・明石・太宰府・松浦(肥前の国、今の佐賀県唐津市)。
源氏物語の「須磨」は古来名文として知られ、高校の教科書にも載っている。(授業で扱うとは限らないけれど)
須磨には、いとど心尽くしの秋風に、海はすこし遠けれど、行平中納言の、「関吹き越ゆる」と言ひけむ浦波、夜々はげにいと近く聞こえて、またなくあはれなるものは、かかる所の秋なりけり。
ざっくり訳
須磨では、さらにいっそう物思いをさせるような秋風が吹いて、この屋敷から海は少し遠いのだけれど、かつて須磨に来た行平中納言が「関吹き越ゆる」と言ったとかいう、秋風に吹かれた須磨の浦の波音が、夜な夜な本当にとても耳近く聞こえてきて、またとなくしみじみと心に沁みるのはこういうところの秋なのであった。
まひろが想像力を駆使して書いたこの須磨の海辺を走るシーンは、いろいろなものから解き放たれて、一人の女性として生きていることを身体中で受け止めているように感じられた。
宇治川のほとりで、「この川で流されてみません」と道長に言っていたまひろとは違う。躍動する命を再び宿したかのよう。
源氏物語では、光源氏が兄である東宮(のちの朱雀帝)に入内する予定の朧月夜と関係を持ち、それが発覚したことで自ら須磨に退去する。その後、須磨で大嵐に会い、龍神の導きもあって、源氏一行は明石に行く。そこで明石入道の娘と出会い、結ばれる。
道長の正妻、倫子は確実に道長とまひろの関係に気づいている。もちろんまひろが旅に出る理由はそれだけではないだろうけれど、若い時から信頼関係にあった倫子のことを慮ったという一面もあるに違いない。
そして、太宰府では周明と再会。
越前で、周明はまひろに思いを抱きながらも、宋との交易のためまひろを利用しようとせざるを得ない辛い状況にあった。
大人になった二人。
ここで結ばれてほしいなー。
TBSのドラマ「最愛」を思い出す。
太宰府で、二人で新たな人生を始めればよいのではないか。
頼むから道長、邪魔しないでおくれ。
そうなるとお供の乙丸は一人きぬのもとに帰らねばならない。
予告を見ると一抹の不安がよぎるが、双寿丸もいる。
双寿丸がきっとおんぶして都に連れ帰ってくれるはず。
先週のこの記事でコングラボード、いただきました。ありがとうございました。
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