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「パリでメシを食う」を読んだらパリでメシを食った気分になれるはずだった

けど、パリでメシを食った気分にはなれなかった、というお話です。
疲れた夜に本を読みたくなる人はご覧ください。(この記事も記事で紹介している本も)


なぜかフランスに惹かれている今日この頃、フランスに関する情報が自然と耳に入ってきます。そんな私の心をとらえて離さない1冊の本に出会えました。

穏やかならぬ内容を、穏やかな気持ちで読めてしまう、不思議な本。
自分の部屋でひとりきり、パリっぽい情景を思い浮かべてから読みましょう。そのパリの風景は本を通してくるくる変わっていきます。

本との出会い ビビビッときて珍しく衝動買いしたわたくし

『パリでメシを食う』

出典:幻冬舎サイト

フランス関連の調べものをしていたとき、突然そのときは訪れます。
「パリでメシを食う・・・」なんだこれ、読みたい!!!
 
劇的な恋が始まるときもこんな感じなのでしょうか。
カーペンターズの トップ・オブ・ザ・ワールド が流れ始め(自分にしか聞こえない)、るんるん気分で相手と手を取り合いました。(相手は本だし手を取るんじゃなくて購入しただけ)

少額な買い物でも慎重になってしまう私ですが、今回ばかりはビビビッときたので即購入。好きなものに出会ったときの直観って大体当たります。

「パリっていうオシャレな響きに、メシを食うっていう表現はどういうことだろう。」タイトルに抱いた違和感は読み進めるうちに納得へと変わっていきます。

ちなみに著者の川内さんはnoteでも活動してらっしゃるので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。


本との冒険 パリの街を縦横無尽にかけめぐる


本書はパリで生活している日本人10人の軌跡を、同じくパリで国連職員として働いていらっしゃた川内さん目線で描いています。

・三つ星レストランの厨房で働く料理人
・オペラ座に漫画喫茶を開いた若夫婦
・パリコレで活躍するスタイリスト
その他素敵な日本人たちがなぜパリに来たのか、何に悩んでいるのか、どのような生活を送っているのか、10人とも内容が面白すぎてとんでもない勢いでページをめくりました。

例えば、日本に馴染めず呼ばれるようにしてパリにやってきて、なんとなく通りがかったリヴォリ(アーティストが不法占拠した建物)に棲みつき、未経験ながらアーティストとして活躍するようになった方。

「そんなことあるんですかい!」
読みながら何度ツッコミを入れたことでしょうか。

だけど、そんなことやあんなことが起きてしまうのがパリという街なのかもしれません。そして、そんなことを起こしてしまう、行動力満載な方々なんだろうなと思います。

作中にはパリの様々な街並みが登場するので、読み終えたころには旅をした気分になります。住んだことのある方が読むと、なつかしい気持ちと当時の苦労を思い出しそうです。

本とのお別れ メシを食った気分にはならなかった


「パリっていうオシャレな響きに、メシを食うっていう表現はどういうことだろう。」最初にタイトルに違和感を抱いていたわたくし。

ですが、読み終えたときこのタイトルがしっくりきました。

「メシを食う」ってのは、人間味があってお祭りみたいで意味不明なパリという街でたくましく生きている10人を表しているのかなと思います。

生計を立てることを意味するには、この仕事で「食べていく」という表現も可能ですが、「メシを食う」っていう表現がこの本にはどうも似合うのです。(実際どのような意図でタイトルを決めたのかは存じておりません!)

優雅にお食事をするような本を想像していた私は、楽しく裏切られました。そうきたら「パリでメシを食っている」気分になれたかというと、なれません。ただひたすらに10人の姿を眺める観客に徹していました。

私の場合、想像上で「パリでメシを食う」ことはできず、実際に現地で「メシを食って」みないと味も食感もわからないんだろうな。
そんなことを思いながら、東京でメシを食う日々に戻ったわけです。

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最後に、好きな作品であればあるほどその魅力を伝えるのが難しいので amazonのリンクを置かせてください。

川内さんご自身のパリ生活を描いた本もあります。こちらも楽しく拝読しました。


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