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『ブルージャスミン』:2013、アメリカ

 ジャスミン・フランシスはニューヨークからサンフランシスコへ向かう飛行機の中で、隣の席になった老女に「ハルは理想の夫だった。パーティーで私が一目惚れ。卒業まで1年だったけど、ボストン大学を中退して結婚した」と話した。
 飛行機を降りても彼女は饒舌に喋り続け、サンフランシスコは初めてであること、離婚した妹のジンジャーと暮らすこと、実の姉妹ではなく2人とも里子だったこと、妹はDV夫に耐えていたことを語った。

 ジャスミンが新居へ到着すると、ジンジャーは不在だった。ジャスミンはジンジャーが近くのバーに預けた鍵を受け取り、新居に入った。そこは以前に住んでいた豪邸とは比較にならないほど、狭い住居だった。
 彼女は家に入り、過去を振り返る。ハルはジンジャーと結婚する前、離婚した妻と話し合って息子のダニーと暮らせることになったと嬉しそうに話した。彼はジンジャーの希望を叶え、5番街に天井の高いアパートを用意した。

 ジンジャーは元夫であるオーギーの元へ行き、息子のマシューとエディーを呼ぶ。「何を急いでるんだ?デートか」と言われたジンジャーは、「関係ないでしょ。ジャネットが来てるの」と言う。ジャスミンの本名はジャネットだが、ハルとの結婚生活に合わせて改名したのだ。
 ジンジャーが「姉さんが立ち直るまで一緒に暮らすの」と話すと、オーギーは「大金持ちの時は知らんぷりで、破産したら頼るのか。金を盗んだ女だ。人生で最大のチャンスを潰された」と嫌味を込めて告げた。

 ジンジャーが「悪党はハルで、姉さんじゃない。彼女は金融オンチ」と反論すると、オーギーは「嘘をつけ。不動産詐欺と金融詐欺に首まで浸かった男と、何年も結婚してたんだぞ。あの女は知ってたんだ」と声を荒らげる。
 しかしジャスミンは実際に、何も知らなかった。結婚していた当時、ハルがビジネスの仕事を目の前で話すこともあったが、ジャスミンは彼を信じていた。友人のノラやジェーンたちにも、彼女は「金融のことは何も分からない」と話していた。

 ジンジャーは子供たちを連れて家に戻り、ジャスミンと会った。彼女はジャスミンに、マシューは注意欠陥障害だと語る。ジャスミンは「全財産を国税庁に取られて一文無し。私には、ここしか無いの」と言うが、ヴィトンのバッグを幾つも持っていること、飛行機の座席がファーストクラスだったことをジンジャーは知る。
 彼女が呆れた様子を示すと、ジャスミンは言い訳を並べ立てた。かつてハルと結婚していた頃のジャスミンは、下請けの建築業者であるオーギーを蔑み、ジンジャーについても「言いたくないけど、頭が悪くて性格も大雑把」とジェーンに語っていた。

 ジンジャーとオーギーがニューヨークへ来た時、ジャスミンは歓迎する素振りを見せたものの、実際は煙たがっていた。ハルもオーギーの無作法な態度に、嫌悪感を抱いた。オーギーは建築会社を始めるために1万ドルを貯金していたが、宝くじで20万ドルを当てていた。
 そのことを聞かされたジャスミンは、「良かったらハルが何倍にもするわ」と告げる。オーギーは難色を示すが、ジンジャーは金融のプロとしてハルを信用していた。ハルはカリブのホテルチェーンに投資しており、オーギーにも20万ドルの運用を促した。

 ジャスミンはニューヨーク観光を希望するジンジャーとオーギーに、リムジンと運転手を手配した。観光に出たジンジャーは、ハルが女性とキスして車に乗り込む様子を目撃した。パーティーで同じ女性を見た彼女はジャスミンに尋ね、友人でモデル事務所経営者のレイリーンだと聞かされた。
 ジンジャーがハルとレイリーンの浮気現場を目撃したことを話すと、ジャスミンは軽く笑い飛ばした。しかし本音では気になっており、それとなくハルにレイリーンとの仲の良さを質問した。

 日曜日、ジンジャーは恋人のチリを紹介するため、ジャスミンを連れ出した。チリは友人のエディーを伴ってカフェに現れ、ジャスミンに挨拶した。チリはジンジャーと同居する予定だったが、ジャスミンが来るので待ってほしいと頼まれていた。
 ジャスミンは今後について訊かれ、大学へ行きたいと語る。エディーは知り合いの歯医者で受付の仕事があると教えるが、ジャスミンは全く乗らなかった。チリとエディーの下品で無神経な物言いに、ジャスミンは苛立ちを隠せなかった。

 エディーがジャスミンに「旦那は刑期を勤め上げたって?」と尋ねると、ジンジャーが「その前に首を吊って死んだ」と告げる。彼女は憎しみを込め、「自業自得よ。大勢を傷付けた。他人のお金でセレブ生活。姉さんに隠れて浮気もしてた」と語る。ハルはレイリーンだけでなく、ジムトレーナーのメラニーとも浮気していた。
 ジャスミンはチリと2人になった時、「エディーがデートしたがってる。電話番号を」と言われて「そんな暇は無い。忙しいの」と断った。チリに「いつまで居候するつもりだ?こっちには計画がある」と問われた彼女は、「潰さないから安心して」と冷淡に告げた。チリが「心を病んでるって?ジンジャーから聞いた」と言うと、ジャスミンは「貴方には関係ない」と腹を立てた。

 ジャスミンはジンジャーに、「チリは第二のオーギー。負け犬よ」と告げる。エディーが提案していた歯科医の受付係についてジンジャーが触れると、彼女は「そんな雑用係、冗談じゃない。私は学校に戻りたいの。学位を取って、遣り甲斐のある仕事に就く。二度と下働きは嫌よ」と感情的になった。
 インテリア・コーディネーターを勧められたジャスミンは、「ネットで講座を取る。でもパソコンオンチだから、まずはパソコン教室に通う」と言い出した。

 ジャスミンはパソコン教室に通う費用を稼ぐため、フリッカー医師の歯科医院で受付係の仕事を始めた。電話番と予約の管理という作業に苛立ちつつ、彼女は仕事をしながらパソコン教室に通う。フリッカーはジャスミンを酒に誘い、口説きに掛かった。ハルが逮捕された時、ダニーは大学を辞めて家を出た。
 ジャスミンが「大学だけは続けて」と頼むが、彼は「親父は人の財産を盗んで破滅させた薄汚い犯罪者だ。なのに普通に暮らしてろと?」と感情的になる。ジャスミンは「中退したら将来が台無しよ」と説得するが、ダニーは「どんな顔わして通えと?僕を捜さないでくれ」と言い、彼女の元を去った。

 ジャスミンは休日に家でパソコンの勉強をしようとするが、チリが友人2人を呼んで騒ぐ。彼らは酒を飲みながら、テレビでボクシングの試合を見て盛り上がった。ジャスミンは苛立ちを抑え、丁寧な口調で音量を下げてほしいと頼む。チリは「休憩してビールでもどうだ?」と誘うが、ジャスミンは彼との会話で苛立ちを強めて薬を飲んだ。
 ジンジャーがチリと友人たちを帰らせると、ジャスミンは「貴方は男の趣味が悪すぎる。もっとマシな男がいるでしょ」と言う。ジンジャーが「いたら考えるけど、今の時点ではいない。彼はセクシーよ。泥棒でもない」と話すと、ジャスミンは嫌味に反発した。

 フリッカーは病院でもジャスミンを口説き、拒んでも執拗に迫る。フリッカーが強引にキスすると、ジャスミンは激しく突き放して「二度と来ません。こんな理不尽には耐えられない」と立ち去った。彼女はパソコン教室で親しくなったシャロンに、「私に合いそうな男性はいない?」と尋ねる。
 パーティーに誘われたジャスミンは尻込みするが、ジンジャーに付き添ってもらうことで承諾した。ハルが友人のナットから弁護士のエイミーを紹介された時、その場にジャスミンは同席していた。ジャスミンが浮気を疑って感情的になると、ハルは真正面から否定した。

 ジャスミンはジンジャーを伴い、パーティーに参加した。ジンジャーはサウンド・エンジニアのアルと親しくなり、その日の内に肉体関係を持った。ジャスミンはウィーンで勤務する外交官のドワイトと知り合い、数年後に帰国して下院議員を目指すと聞かされる。ドワイトが妻を亡くしていると聞き、ジャスミンは自分も夫を亡くしていると話す。
 しかし彼女は「夫は外科医で心臓発作で死んだ」と言い、自分の仕事についてもインテリア・デザイナーと嘘をついた。ジンジャーの浮気を知ったチリは怒鳴り込み、ジャスミンにも「お前のせいだ」と怒りを向ける。ジンジャーはチリを突き放し、声を荒らげて追い払った…。

 脚本&監督はウディー・アレン、製作はレッティー・アロンソン&スティーヴン・テネンバウム&エドワード・ウォルソン、共同製作はヘレン・ロビン、製作総指揮はリロイ・シェクター&アダム・B・スターン、共同製作総指揮はジャック・ロリンズ、撮影はハビエル・アギーレサロベ、美術はサント・ロカスト、編集はアリサ・レプセルター、衣装はスージー・ベンジンガー。

 出演はケイト・ブランシェット、サリー・ホーキンス、ピーター・サースガード、アレック・ボールドウィン、ボビー・カナヴェイル、アンドリュー・ダイス・クレイ、ルイス・C・K、マイケル・スタールバーグ、タミー・ブランチャード、マックス・カセラ、オールデン・エアエンライク他。

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 ウディー・アレンが2009年の『人生万歳!』以来、久々にニューヨークで撮影した作品。アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞、全米批評家協会賞、NY批評家協会賞、LA批評家協会賞など数々の映画賞で、ジャスミン役のケイト・ブランシェットが主演女優賞を総舐めにした。
 他に、ジンジャーをサリー・ホーキンス、ドワイトをピーター・サースガード、ハルをアレック・ボールドウィン、チリをボビー・カナヴェイル、オーギーをアンドリュー・ダイス・クレイ、アルをルイス・C・K、フリッカーをマイケル・スタールバーグ、ダニーをオールデン・エアエンライク、ジェーンをタミー・ブランチャード、エディーをマックス・カセラが演じている。

 これは多くの映画評論家が指摘していることだが、ザックリ言うとウディー・アレン版の『欲望という名の電車』だ。ヒロインは夫の問題で離婚し、夫は自殺する。ヒロインは妹の家に身を寄せるが、その夫(この映画だと婚約者)とは全くソリが合わない。ヒロインは再婚を目指すが、嘘が露見して関係が破綻する。
 その他にも様々な類似点が見られるが、もちろん偶然ではない。明らかにウディー・アレンは、『欲望という名の電車』をベースにして本作品を構築している。

 冒頭、ジャスミンは飛行機で隣になった老女に、一方的に話し続ける。飛行機を降りても、ずっと話し続ける。老女が途中で切り上げて立ち去ると、「今度はランチでも。電話番号は?」と名残惜しそうに言う。老女は迎えに来た夫に知り合いかと問われ、「隣になっただけ。自分のことばかり」とウンザリした様子で告げる。
 たぶん、「ジャスミンと老女は親しい間柄」と観客に思わせようとする仕掛けだと思うが、それは成功していない。ハッキリ言って、最初の時点でジャスミンと老女が赤の他人なのは見える。

 ただ、ともかく「ジャスミンが他人に色んなことを喋りたがる女」ってことをアピールしたいのは確かだし、それは充分に伝わる。新居に入っても、彼女は誰もいないのに思い出を語っている。とにかくジャスミンは、自慢したくてしょうがないのだ。
 話す内容の全てが自慢になっているわけではないが、本人としては自慢になっている。彼女の話題は自分のことばかりであり、「私を見て」ということなのだ。没落しても、そう簡単に虚栄心は薄れない。

 ジャスミンは破産しただけでなく莫大な借金を背負っているのに、飛行機はファースト・クラスで、バッグは全てルイ・ヴィトン。それについて問われると、彼女は「知らないけど買っちゃったの。贅沢が身に付いてる」とか「使い古しで私のイニシャル入りを誰が買う?」などと言い訳する。
 しかし、単に自尊心を捨てられないだけなのだ。ジンジャーは真実を知っているから、ジャスミンも彼女の前では虚構で飾ったりしない。しかし何も知らない人の前では、セレブを気取りたいのだ。

 新居でジンジャーに会ったジャスミンは、「私にはここしか無いの。一人ではいられない。悪いことばかり考えて」と口にする。しかしハルと暮らしていた頃の彼女は、明らかにジンジャーを見下していた。裕福な暮らしにドップリと浸かり、高慢な考え方になっていた。
 ジンジャーがニューヨーク案内を頼っても「車と運転手を貸すわ」と言い、同行は避けようとした。夕食の招待を受けても、理由を付けて断った。そもそも、来訪そのものを好ましく思っていなかった。下層階級の妹夫婦とは、距離を置きたがっていた。

 そんなジャスミンの感覚は、新居へ来てからも基本的には変わっていない。無一文になっても、気取った性格は染みついたままだ。彼女はオーギーが評したように、「大金持ちの時は知らんぷりで、破産したら頼る」という身勝手な女なのだ。
 それでも反省して殊勝な態度を取れば、哀れに思えたかもしれない。だが、そんな意識は全く感じられない。ただし、ジャスミンは無自覚なのだ。だから余計にタチが悪いとも言える。

 ジャスミンはジンジャーに誘われたカフェでチリを待っている時、「美しい街ね。ヨーロッパに似てる」と言う。「海外旅行は?」と彼女はジンジャーに質問し、一度も無いと聞くと「良く2人で回ったものよ。サントロペ、カンヌ、モナコ」と自慢げに語る。
 ハルと結婚していた頃の生活を、ジャスミンは今も忘れられないのだ。彼女は成金なのに根っからのセレブのように振る舞い、過去の栄華を忘れられず、惨めにしがみ付く。虚構を重ねることで、プライドを保とうとする。

 本気で「ジンジャーに対して申し訳ない」「早く自立して出て行きたい」という思いがあれば、ジャスミンは歯科医の受付の仕事も最初に提案された時点でOKしただろう。
 しかし彼女は、「そんな雑用係、冗談じゃない。私は学校に戻りたいの。学位を取って、遣り甲斐のある仕事に就く。二度と下働きは嫌よ」と言う。プライドの高さが邪魔をして、下働きの仕事は我慢できないのだ。だから学位を取って、ちゃんと自慢できるような仕事をやりたいと考える。

 ジンジャーが「ファッション関係の仕事が向いてるかも」と言うと、ジャスミンはインテリア・コーディネーターになろうと決める。だが彼女は「ネットの講座を取ろう。でもパソコンが苦手だから、まずはパソコン教室に通う。そこで操作を覚えたらネットでインテリアの勉強をする」と、ものすごく遠回りな計画を立てる。
 それが間違っていることに、彼女は全く気付いていない。精神を病んで正常な判断力が失われているという部分もあるだろうが、それよりは「変なプライド」ってことなんだろう。

 ただ、ここで「ジャスミンがパソコン教室のために歯科医の受付の仕事を始める」という展開に入るのは、中途半端に気高さを曲げているように感じる。そこは徹底して、セレブ生活やプライドの高さを捨てられない形にした方がいい。
 どうしても「ジャスミンが歯科医の受付になる」という展開を持ち込みたいのなら、もっと「それをやる以外に選択肢が無い」という状況まで追い込んだ方がいい。あと、他人と顔を合わせたくないからネットのインテリア講座を選ぼうとしたはずなので、パソコン教室で他の生徒と会うことは全く気にしないのが、どうも整合性が取れていないように思えるぞ。

 チリが「インテリアはやめて、他の仕事を探せ」と言った時、ジャスミンは「何をしろと?ウェイトレス?スーパーで袋詰め?」と告げる。「ジンジャーはやってるぜ」と言われると、彼女は「彼女と私は完全に違うわ」とジンジャーを見下している意識を不用意に露呈させる。
 ジンジャーが「遺伝子からね」と横から口を挟むと、ジャスミンは「遺伝子のせいにして、努力もせずに結婚するから」と言う。しかしジャスミンにしても、努力して金持ちになったわけではないのだ。たまたまハルに見初められただけだし、結婚してからも全く努力はしていない。詐欺師のハルが他人から巻き上げた金で、贅沢の限りを尽くしていただけだ。

 この映画は成金のジャスミンを愚かな女として描くが、一方で下層階級を「清貧」として描いているわけではない。そこでベタに対照的な関係を示すわけではない。下層階級の方でも、チリのように醜悪な存在として描かれる人物もいる。
 最初は「がさつで無神経なだけ」にも見えたチリだが、その態度はすぐに、ジャスミンへの同情心を抱かせるほど酷いモノになっていく。一方でドワイトのように、富裕層でも立派に見える人物を配置している。性格の良さは、貧富の差だけで確定していない。

 ジャスミンは周囲の人間に迷惑を掛けたり不幸になったりしても、罪悪感は全く抱いていない。自分も被害者だという感覚なので、周囲に責められても全く理解できない。チリに「ジンジャーの金もパーだ」と非難されても、「大儲けをと言っただけ。財テクなんて知らないわ。私は屋敷も家具も毛皮も指輪も、全ての財産を失った」と訴える。
 だが、その財産は自分で稼いだわけじゃなく、ハルが他人を騙して得た物だ。それでも彼女は、「奪われた」という感覚なのだ。しかも彼女は、ハルを憎んでいるわけでもない。だからハルと暮らしていた頃のセレブ生活を語る時の彼女は、とても自慢げだ。

 ジャスミンはマシューから「リッチで働いたことが無いって聞いた」と言われると、「何がしたいか分からなかったの。本当は何か仕事がしたかった。エネルギーはあった。観劇やショッピングだけじゃない。慈善活動もした。美術館や学校の寄付金集めも。富には責任が伴う。私は頭の空っぽな買い物フリークとは違う」と語る。
 だが、それは自身を美化するための言い訳に過ぎない。そんなことを話している今も、彼女はドワイトに嘘をつき、政治家の妻になってセレブ生活を送ろうとしているのだ。結局のところ、ジャスミンはセレブとしての裕福な生活が忘れられず、そこに戻ろうとしているのだ。

 ジンジャーはアルが妻帯者だと知ると、それまで拒絶して距離を置こうとしていたチリと簡単にヨリを戻す。彼女は金満生活など知らないこともあって、すぐに妥協できるし、割り切れるし、潔く過去を捨てることも出来る。そういう人間は、それなりに幸せな暮らしを手に入れることが出来る。
 一方、ジャスミンはハルとの生活があまりにも華やかだったせいで、その過去と決別できない。だからドワイトに嘘をついてセレブに戻ろうと画策するが、オーギーに真実を暴露されて破綻する。

 セレブに戻る夢を断たれたジャスミンは、それでも過去に戻るため、ダニーと接触する。「政治家の妻」という夢を失った彼女にとって、「あの頃の幸せ」を感じさせる希望はダニーだけになっていたのだ。
 だが、ダニーはジャスミンが浮気に怒ってハルをFBIに通報したと知っており、冷淡に拒絶する。最後の救いさえ失ったジャスミンは、チリとヨリを戻して幸せそうなジンジャーに「ドワイトと結婚して云々」と、まるで上手くいっているような嘘をつく。
 あまりにも惨めな状況で、何とか気持ちを保つためには、そんな虚勢でも張らないと無理だったのだ。しかし実際のところ、彼女の心は既に崩壊している。彼女に待ち受けているのは、薬でボロボロになることぐらいだろう。確実に言えるのは、もう彼女が本当の幸せを掴む可能性は無いってことだ。

(観賞日:2018年7月8日)

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