《五. 謎の俳優、山田頼児 》
『妖民の島』以降、雷次が大映で監督した作品には、全て「山田頼児」という役者が出演している。山田頼児が演じているのは、全て斬られ役などの端役だ。大部屋俳優なら、他の監督の映画にも出演しているはずだが、雷次の作品以外で名前を見ることは無い。
察しのいい人ならお分かりかもしれないが、これは雷次の変名である。
この当時、監督が俳優としても出演するのは珍しいことだった。例えば黒澤明や小津安二郎が自分の映画に出ることを想像してみるといい。そんなのは、有り得ないことだ。田中絹代のよ