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いままで映画、食事、ドライブと伴にしたが、すべてこちらから誘った。しかし、今回は緋乃のほ…
「聞こえなくなっちゃった。」 シートの背に右半身を預けた緋乃が目をわずかに開けて呟いたの…
左前方に見えていた山並がやがて近づき、道は英彦山山系の南側の山肌を登り始める。道路にも、…
高速道路を玖珠インターで降り、県道から国道へと左折する。 「なんだかうれしそう。」 「うん…
「わっ、寒!」 車を降りると、冷たい空気が頬を刺す。時計を見るとまだ10時前。連休中日だが…
「見て、つらら!」 階段を昇り始めてすぐ、緋乃が声を上げた。回廊の屋根の両側にさがった、…
ストーブのスイッチを入れ、部屋を使っていることを示す札を掛けに外に出る。ドアの前には、長屋と二つの小さな別棟に囲まれるように中庭があり、雪をふんわりかぶった生垣から真紅の花が顔をのぞかせている。白との対比で美しい。未だ山茶花と椿の区別がつかないのだが、1月に咲いているところを見ると椿ではなかろう。『花の咲くのが春だから、木篇に春で椿』と覚えた。しかしこのツバキを表す椿という漢字は日本製で、漢名は山茶花、つまりサザンカの漢字表記が本来の名前らしい。『表記・読みが山茶花→茶山花→
大学の本学に通うようになると、坂道に沿って建った家に間借りをした。主たちの住んでいるのは…
「ああ、のぼせそう。」 独り言にしては大きな声に続き、湯から上がる音。こちらも記憶をたど…
「平気?」 声が近い。 「ああ、なんでもない。急に体を冷やしたからだろう。」 当たり障りの…
丘の上の檜の背後には、見事な青空が広がっている。気温も上がり始めたようだ。内湯で軽く互い…
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