霞 ~8.独りよがり~
大学の本学に通うようになると、坂道に沿って建った家に間借りをした。主たちの住んでいるのは玄関のある2階と3階、私が借りていたのは1階の10畳1間。専用のトイレ、出入り口と台所、主たちとの共用の風呂があったが、風呂に入るとき以外に主たちが降りてくることはほとんどなかった。
家から私鉄の駅までの途中に小さな女子短大があり、すれ違うときの香水の香りが新鮮だった。1人暮らしの広い部屋、しかも絶好の環境となれば、よからぬことを思いついて当然だろう。しかし誰にも信じてもらえないが、女性と何を話していいかもわからなかった当時の私は、たとえ何度かすれ違ったことのある女学生から微笑みかけられても、顔をこわばらせてぺこりと頭を下げるのが精一杯だった。
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恋愛感情の描写よりも、女性の強さ畏れを描いてみました。自分の失敗談も含めてこんな出会いがあってもいいかな、と。
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