アートチャレンジ 黒澤明 造形美の絵画的映像
MAHO KUBOTAさん発のアートチャレンジ「人生を変えたアート」、ギャラリールンパルンパの絹川さんよりバトンをいただきました。
私の人生に影響を与えたアート、アーティストを10日間ご紹介したいと思います。
アートチャレンジ 2日目
黒澤明(映画監督.脚本家)
造形美の絵画的映像
映画の幅に収まらない内容の作品が多い印象の黒澤明。映画というより美術品や思想書の様な印象があります。
黒澤明は映画界に行く前は画家志望でした。
作品が一本毎に独自のスタイルが様式化された完璧さ、構図、細部の質感、色彩といった絵画的な要素が他の映像作家より抜きん出ています。
細部の描写や絵としての作り込み、スクリーンを大きな絵画と捉えて観た時、その美しさが際立ちます。
「七人の侍」や「羅生門」はライブカメラで撮影した洗練ドキュメンタリー、
「蜘蛛の巣城」は室町絵巻に入って出てこれない程の画面の空気圧、
「どですかでん」はカラー版のつげ義春の細密画の様。本当にどれも凄く、絵画的。
「どですかでん」以後カラーになると、絵画性はより強調され静止した構図で人物が動く舞台の様な画面が多くなる。
晩年の「乱」は能を思わせる幽玄なパノラマ画面に至ります。
これ等の映画が絵画の様な圧力を持って記憶に刻印され、音像と俳優の演技も素材となった造形力の魔力が黒澤作品には漲っています。
ロシアで撮影された少数民族のデルスとロシア兵の交流を大自然と都会の対比で描いた作品「デルスウザーラ」。
デルスが劇中で現代人の事を「箱に住む人々」と言い劇中の後半はデルスがその箱(都市)に入り、逃げ出し死に至る悲壮的な物語。
そういう視点を現代(美術)に当てはめた時に自分は何が出来るのだろうという疑問がずっと横たわっています。
現代(美術)はホワイトキューブ「箱」に支配されています。ホワイトキューブとは現代文明の洗練された概念と美意識の極限状態だと私は解釈しています。
黒澤も世田谷の箱に居た訳で矛盾の産物には違い無いのですが..。
最近の自分の悩み、作品毎にスタイルが変わって行く事は、黒澤作品の様に一作毎にスタイルを発明して行く様に捉えればいいんだなと、今回思えたのは収穫。
私にとって黒澤明とは船の錨、気付くとそこにある重いアンカーの様な存在です。