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展覧会のおばちゃんたち

よしなしごと【気まぐれ選51】

 「おばさま」ではなく「おばちゃん」たちです。大阪の国立国際美術館『美の宮殿の子どもたち~ルーブル美術館展』にて。「子ども」をテーマに、「時代・地域・分野を超えた膨大なコレクション」のルーブル所蔵品を、がさっと持ってきた展覧会。
 正直、これ!といった目玉はありません。時代も古代エジプトからギリシャ、ローマ、中世・・と幅広く、絵画あり彫刻あり出土品あり。「これもついでにいっとこか」と段ボール箱に押し込んだ在庫一掃特選品バザールみたいな感じも。

 例によって、観客はおばちゃんたちが多い。そして例によって、思いついたらとにかくその場でよくしゃべる。聞きたいわけではないが耳に入る。

「うちも橋の下で拾われたて、よう言われたわ」
  (『河から拾われるモーゼ』を前にして)

「カイロ(博物館)で見たけど、もっとたくさんあったよ~」
  (『少女のミイラと棺』を横目で見ながら)

「あそこ何ていうたかな、ほれ、ヒレヒレの・・」
  (フィレンツェのウフィッツィ美術館でも見たと言いたい)

「ルーブルはとてもじゃないけど1日では見られへんよねえ・・」
  (休憩用の椅子に座りこんで足をさすりながら)

 ところでこの展覧会は『やなぎみわ~婆々娘々』を同時開催している。多分おばちゃんたちは誰も知らない映像作家だが、おまけなので、「見とかな損やで!」とみんな見ている。
 しかしながら『マイ・グランドマザーズ・シリーズ』の作品は、おばちゃんたちのおしゃべりを封じ込め沈黙させている。ルーブルより力がある・・と思う。
【よしなしごと0316・2009年7月 2日 (木)掲載】

【よしなしごと】シリーズは『tanpoPost』に2004~2013年にかけて掲載したブログ記事です。エッセイ風のショートストーリー、パロディ、ニセ論文、小ネタ、などなど。思いつくままに書き散らした小文をランダムに【選】としてご紹介します。お付き合いいただければ幸いです。

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