どこまでも「売り手」に寄り添ったプロダクトを目指して
こんにちは!株式会社タノム代表の川野です。
"卸業者と飲食店の日々の受発注をスマホでカンタンに"をコンセプトに開発したBtoB SaaS「TANOMU(タノム)」を提供しているスタートアップです。
タノムは、業務用食品を取り扱う卸業者さんが、スマホで簡単に販売サイトを作成でき、飲食店さんからの注文をチームで管理することが可能なサービスです。卸業者さんから月額利用料をいただいており、注文する飲食店さんは無料というビジネスモデルで提供しています。
私たちがこの事業を着想するまでの経緯は過去の記事でもご紹介していますが、今回はタノムというサービスの裏側にある「売り手目線の思想」について書きます。
ここでいう「売り手」とは、業務用食材を販売する卸売業者さんを指します。買い手(飲食店)ではなく、あえて卸売業者さんに寄り添いプロダクトづくりをしてきたことで、業界特有の課題や困難さに気づけたことが、タノム特徴・独自性につながっていると考えます。
お詫び行脚で知った卸業者さんのリアル
私自身のこれまでの経歴として、飲食店の大手チェーンで事業開発を担当したり、自社でミールキットの事業を立ち上げてきました。これらの経験において「買い手」として卸業者さんと取引させていただくことはありましたが、タノムを始めるまでは「売り手」である卸業者さんのリアルな内情についてはほとんど知りませんでした。
卸業者さんの内情について深いインサイトを得ることができたのは、前の事業であるミールキットを閉じる際に取引先である各社にお詫び行脚に行ったのがきっかけです。
その時はまだタノムの構想は持っておらず、とにかくこの2点をひたすらお伝えして回っていました。
①ミールキット事業を終了することになり今後仕入れができない。本当に申し訳ない。
②その上で、なんでも良いのでなにか私たちが力になれることはないか。
すると築地の卸業者さんから「明日、朝の2時に築地に来れる?実際に見てみたらなにか気づくこともあるんじゃない?」と声をかけていただきました。
(画像引用: https://www.pakutaso.com/20170151027post-10169.html)
その頃、築地はちょうど豊洲の移転前でかなりばたばたしており、朝の2時から現場は張り詰めた雰囲気だったのを覚えています。現場では深夜からノンストップで作業が止まりません。ざっくりいうと、こんな流れです。
朝7時、ぐったり疲れ果てた私に卸業者の担当の方が声をかけてくれました。
「川野さんやってみて分かったと思うけど、忙しすぎて効率化なんて考えている余裕なんてないでしょ?」
本当にこの時は体力を使い果たして精一杯だったのですが、それと同時に見えてきたものもありました。ここが、タノムの出発点です。
競合相手は「慣習と文化」
現場に足を運んだことで、紙を使った業務の慣習と文化が想像していた以上に現場に残っていることが分かりました。本当に変えることができるのか?という不安な気持ちと同時に、多くの業界でデジタルシフトが起こる中で、卸業者の現場も5年後、10年後同じままのはずはない!という確信を持つことできました。
このような手書きの注文が多くの割合を占めています。
まだまだFAX・電話がメインではあるのですが、若い世代のシェフはLINEで注文することも増えてきていることが分かりました。こういった現場の情報を集めることで、「スマホが普及した今だからこそできる新しい受発注が求められているのでは?」という大きな仮説を導き出すことができました。
売り手に寄り添ったプロダクト作り
買い手である飲食店の課題から作られたサービスは、多くあります。POS、予約台帳、発注システムなどなど。しかし私たちは、ここまでの経緯から「売り手」目線で徹底的に寄り添ったサービスを作ることを決めました。
そんな私たちのサービスを少しだけ紹介させてください。
モバイルファーストなUX
我々がヒアリングしていた中小規模の卸業者さんでは、PCを日常的に使われている方はほとんどいませんでした。前述のとおり、紙を中心としたコミュニケーションの中で、唯一日常的にしようするのがスマートフォン。
そこでタノムではMVPフェーズから徹底してスマホUIを磨き続けてきました。特にB2BのSaaSではまだまだスマホに最適化できていないプロダクトが多く、ここを価値に感じてくれる業者さんも多くいます。
「業務効率化ツール」ではなく「売上UPのための武器」
タノムの導入初期は【業務が効率化される】というコンセプトで打ち出していましたが、実は「売上UP」という視点こそが卸売業者さんから見たときに大きな価値になっていることに気づきました。
「タノムを入れてから【ついで買い】をしてもらえるようになった」
「こんな食材も取り扱っているのか、という声をいただき新たな取引が生まれた」
こういう声が、タノムの導入企業が増える中で聞こえてくるようになったのです。
中には売上がおよそ1.5倍になった卸業者さんもいます。noteの記事にインタビューを掲載しているので、ぜひご覧ください。
今後のプロダクトの方向性
今後の方向性は大きく2つの方針で考えています。
①エンタープライズ対応
元々は中小向けに作っていたタノムですが、最近は年商数百億円あるような大企業さんの利用も増えてきました。金額規模は大きくても、悩みのタネは中小企業と同じ。タノムがあらゆる領域・規模の卸売業者さんの課題に寄り添えるよう、機能を広げて行きたいと考えています。
②受発注以外の課題への対応
例えば、与信管理、債権回収、ロジスティクスなど、卸売業者さんをとりまく課題は広範囲にわたります。特に債権回収の領域についてはタノムと相性の良い部分なので、他スタートアップとも積極的に連携しつつ取り組んでいきます。
おわりに
今回は、私たちがつくる「タノム」を、より深くご紹介させていただきました。
まだまだ未完成のプロダクトですが、改善を重ねる中でお客さんから嬉しいお言葉をいただくことも増えてきました。
「今の費用、安すぎるんじゃないの?大丈夫、もうちょっと払うよ!」
「タノムはうちにとって最強の武器を手に入れたようなものだから、できれば同業者に教えたくないな。」
これからも売り手に寄り添ったプロダクトを作り続けます!
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