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谷郁雄の詩のノート28

梅雨明け宣言は発出されていませんが、明らかに梅雨明けの空の色です。これからまた「アツいね~」を連呼する季節になりました。皆さん、熱中症にお気をつけて。先日、小さな写真展を観に中野坂上に行ったら、浴衣姿のうら若き女性たちが楽しげに語らいながら歩いていました。夏のイベントでもあったのでしょうか。いい風も吹いていたので、思わず背後からパシャリ。百年後には、この女性たちはこの世にいません。しっかり見ておきたいと思いました。(詩集「詩を読みたくなる日」も読んでいただけると嬉しいです)


「ユーミンの声」

ユーミンの声が
だんだん
おばあさんに
なっていく

声も
年を重ねて
人生の
長旅をする

八十歳の
ユーミンが歌う
ひこうき雲を
聴いてみたい

それまで
ぼくも
頑張って
生きてみようか


「印税」

忘れた頃に
届くのが
印税送金のお知らせ

額は
いつも
わずかだが
つかのま
笑顔になれる

チリも
積もれば
小さな山くらいには
なるかもしれない

送金
ありがとう
貧しいわが家の
くらしの向上のために
役立てたいと思います


「ありふれた人生」

人生で
いちばん
大切なことは
あなたぬきで
決められてしまう

あなたが
この世に
生を受けること

そして

あなたの
生には
期限があること

けれど

あなたは
ただ
ありふれた人生を
生きればいい

泣いたり
笑ったりして


「するめ」

せんたく物が
からからに
乾くと
もう何も
悲しくない

乾燥機の中に
いるような
この夏の
東京の暑さ

夢も
希望も
悩みも
思い出も
みんな
ドライフラワーになった

夕方
妻のパジャマが
干からびた
するめになって
風に吹かれています

©Ikuo  Tani  2023


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