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人事のやりがいは「人の人生を豊かにすること」・私にとっての人事の仕事と今後の想い
私はこれまで10年以上人事関係の仕事をしています。その中で、私はこの仕事を、人の人生を豊かにする仕事と位置付けています。
と言うのも、人事は、人生の大半を占める仕事の時間の質を高めますし、また様々なライフイベントも取り扱うからです。
例えば、仕事環境の充実を図ったり、入社・結婚・出産・介護・退職に関わったり…
人事の仕事は人の人生に大きく寄与する。それが厳しいし楽しい!
外からだと意外と見えにくい人事の仕事内容ややりがい、そして今後に向けた想いなどのお話です。
1.人事の仕事は4つの領域と3つのレベルで構成される
人事の仕事は、大きく分けると採用・教育・労務・人事企画の4つの領域に分かれます。
そして、それぞれの領域の中でのレベル感として、ルーチン人事・インフラ人事・戦略人事の3段階があります。
※以下は、色々な見方があると思いますが、私の理解をまとめたものです。
それぞれの領域の目的と業務内容は次の通りです。
1ー1.採用
一般的にイメージしやすいのは採用ではないでしょうか?会社説明をしたり、面接したり、入社の説明があったり…。
採用の目的は、企業の成長・維持に向けた人員確保です。事業を広げるための攻めの採用、既存事業や自然減に対応する守りの採用。その両方を行うことで企業活動の成長と維持を図ります。
また業務は、経営計画に基づく人員計画の策定、採用方針や採用計画の作成、採用手法の選定と実施。簡単に言えば、どんな人材を採る?何人採る?どうやって採る?採用活動する!ということです。
1ー2.教育
これも比較的イメージしやすいと思います。新人や管理職と言った階層別教育や、営業・SEと言った専門教育、カルチャー教育などなど。
教育の目的は、企業成長の速度を加速させることです。仕事をすることは、それだけでも日々成長に繋がります。それを意図的・計画的に教育することで、成長の幅を広げ、また、社員と企業の成長の方向性を重ねることにより、企業成長の速度を加速させます。
業務は、経営計画に基づく教育方針の策定、教育計画の策定、教育方法の選定、カリキュラムの作成と実施。こちらも簡単に言えば、どんな人を増やしたい?何をする?外注or内製?カリキュラム作って実施!みたいな感じです。
1-3.労務
労務の機能は幅が広く、少し分かりにくいかもしれません。勤怠管理、給与計算、社会保険、健診、衛生委員会、メンタルヘルス、規程管理、産育休に介護…挙げればキリがありません。
労務の目的は、小さなものでは法令遵守や健康管理ですが、突き詰めると安心して働きやすい職場環境づくりです。その点では、人事企画と被るところがあります。
業務は多岐に渡りますが、大別すると、社内外がからの指摘がないような社内整備(労基署から指摘がないとか)と、インナー・アウターブランディング(健康経営優良法人認定を取得するとか)に分かれます。
1ー4.人事企画
ここが一番わかりにくいところかもしれません。例えば人事制度の構築や、心理的安全性の高い職場づくりなどの仕組みづくりです。
人事企画の目的は、人と職場の活性化にあります。そしてその先には、企業のビジョンや理念の達成があります。
業務としては、ハードの整備とソフトの整備があります。ハードとは、人事制度のような人材育成の仕組みであったり、キャリアプランや評価制度のような物差しです。一方ソフトとは、人間関係やモチベーションと言った目に見えない部分を指します。
2.社員の悩み相談にひたすら乗っていた人事時代
私の勤めていた会社は企業規模が大きくなかったのもあり、4つの領域を全て担うことができました。
比較的、人事は領域ごとに分かれることが多いため、一人で全部同時にやるのは珍しいかな、と思っています。
結果、何が起きたかと言うと「とりあえず田中に聞こう」状態になりました。しょっちゅう、電話とメールで問い合わせが来ます。それだけで一日が終わります。
例えば…
配属先上司「今年の新人の傾向ってどんな感じ?」
私「Aさんはこれが好きで、Bさんはこの辺が課題で…」
みたいな人の特性に関する質問だったり。それから…
社員「36協定の残業時間計算がよくわからないんだけど…」
私「いっしょに画面見ながらやりましょうか。この週はここの振替があるので…」
みたいな法律だったり、あとは手続きの質問だったり。他にも…
現場上司「新しい人事制度で部下から問い合わせが来たのだけど、こういう回答であってる?」
私「概ね大丈夫です。前制度からの変更点のところだけ、これこれという意図があって…」
と言った、制度や仕組みに関するものもありました。
役員・管理職・一般社員、上司・部下、先輩・同僚・部下…
思い返すと、本当に毎日多くの相談が来ていたなぁと思いますし、もはやそっちの方が本業だったような気がします。
そんな相談の中でも、ずば抜けて多かったのが、人間関係とキャリアの相談でした。
3.小さな一歩の積み重ねで人生はより良くなっていく
人間関係の代表的なものは、ミスコミュニケーションでした。
上司と部下であれば、上司の伝え方はうまくないし、部下の聴き方も思い込みが入っている。その両方から相談が来て、間に入りました。
他にも、上司が合わない、先輩が苦手、職場の居心地が良くない…といった人間関係の根っこの部分も多かったです。
また、キャリアの代表的なものは、異動したい・退職したいという話です。
今の職場では力を発揮できない、やりたいことができない、成長実感が得られない。そうした相談を受けて、本人の想いや思い描く姿と現実を具体的にしながら、時には所属長にもアプローチをしました。
正直、時間も沢山取られますし、そんなの自分たちで解決してよ!!と思うこともありましたが、それでも相談に乗ることは楽しかったです。
なぜなら、相談の大小に関わらず、それが解消することで社員一人一人が前に進めることが嬉しかったからです。特に、人間関係とキャリアの相談に関しては変化が顕著でした。
誤解やわだかまりが解けて職場が明るくなる。
自分の目指す姿が明確になって、目の前のことに100%集中できる。
信頼関係ができてお互いに本音で話せるようになる。
そうして職場での時間が豊かになることは、人生の充実度合いにも影響を与えると考えています。
仕組みやルールを創ったり実行するだけではない。人と直接関わって、その人の人生を少しずつ充実させることができる。それが私が感じる人事の仕事のやりがいです。
4.これからは一人一人が一歩踏み出すことの支援をしたい
今、私は人事関係の仕事に区切りを付けました。そして今後は、自分がこれまでやりがいに感じてきた、人間関係とキャリアの課題解決をしていきたいと考えています。
方法は色々あると思いますが、相談・自己理解・トレーニングの3つで準備をしています。
相談で言えば、2年前にキャリアコンサルタントの資格を取りましたし、先日コーチングの資格も取得しました。これからはキャリアコーチとして活動したいと考えています。
また、人間関係やキャリアにおいては、自分を知ること、つまり自己理解が何よりも大事です。
私は10年以上、DiSC診断という自己理解ツールを社内研修で使用してきました。認定ファシリテーターでもありますので、こちらも使っていくと、効果的であると思っています。
最近はエニアグラムも勉強していますので、合わせて活用したいです。
そして、トレーニングに関しては、これまで学んだ人間関係づくりやコミュニケーションのトレーニングやスキルを活用して、自分のプランも開発できればと思っています。
そんなことを言いながら、あっさり人事に戻るかもしれませんが、どれにしても、それは手段に過ぎません。
キャリアや人間関係の課題は多くの人が持つ悩みであると思っています。もし自分の将来に確信を持てたら、人間関係にエネルギーを取られず楽な関係を築けたら、人生はどれだけ豊かになるでしょうか。
もっと人に寄り添い、一緒に悩みの種や障害を取り除くことで、大切な一歩を踏み出す。その支援をすることが私の実現したいことです。
そしてその一歩の積み重ねによって、その人の人生がより良いものになっていけば、こんなに幸せなことはありません。
「人の人生をより豊かにする」
人事の仕事で学んだこの想いをもっと深めていきたいと思います。