今の日本で災害”復興”は叶うのか
石井 旭,中嶋 唯貴(2024)"平成30年北海道胆振東部地震における住まい再建・改修過程と人口移動実態"日本建築学会計画系論文集 89
論文の目的
大きな災害が起きた地域では、人口流出が加速する
この傾向は日本だけではなく世界的に一定の傾向として確認されている
今回の論文は北海道胆振東部地震で被災された方を対象とし、住まいの再建や人口移動の実態を細かく追跡調査している
災害を契機として町外に移転した世帯は
借家世帯、子育て世帯、単身世帯が多く、高齢者世帯はもとの場所にとどまる傾向にあるようだ
感覚的にも納得できる
ちなみに、子育て世帯の町外移転数は自治体によって違いがあったようだ
この論文のまとめ
人口の大幅な流出は自治体の存続にかかわることで、自治体としてはできるだけ避けたい
どのように人口が流出していくのかは、本論文を含めすでに多くの先行研究が存在している
各自治体は災害後に復興計画を練るのではなく、事前にシミュレーションしておき、いざというときは迅速な対応をすることが求められる
復興は必要か
ところで、よく言われる災害「復興」という言葉
これはすでに時代遅れではないだろうか
復興とはこのような意味だ
多くの自治体で人口減少が進む中、果たして「再び盛んにすること」ができるのだろうか
「復興」とは、高度経済成長期のような、経済も人口も伸びている時期に使われる時代遅れの言葉ではないだろうか
コロナでリモートワークが加速し数年先の未来が早まって日常がガラッと変わったように、災害は来るべき未来を先取りするきっかけになる
地震による災害もそうだ
災害大国かつ人口減少期の日本では、災害が起きることを前提とし、災害後は「元の姿に戻す」「元の姿より良くする」計画ではなく
むしろ災害を契機とし、来るべき未来を先取りできるような構想を立てておくことが必要なのではないか