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まめっこサバイバル

息子が一人で走り始めた頃。
外出する時は、あり得ることとして必ずお尻拭きと替えのズボンとパンツをリュックに忍ばせていた。それは5歳になる前くらいまでのことだった。

しかし昨日、もうすぐ7歳となる息子が急に催して我慢できずにコンビニに辿り着く前に、盛大にモノを漏らしてしまった…。一緒にカットに行ってお昼を食べた後、帰り道に公園で遊んでいるときのことだった。
全く予想だにしていなかった展開。

コンビニの多目的トイレを陣取る。
打掛錠の表示が青から赤へ、さながら緊急手術室と化す。
どうすればよいか。
当然お尻拭きも着替えも持ち合わせていない。
息子の下半身の衣類はもはや使い物にならない。
とりあえず、このモノを処理しなければいけない。
ウォシュレットの経験もない息子に便座に座らせてウォシュレットを強要したり、そこらにある紙やら用具やらを駆使して、とりあえず処理・洗浄を行う。
なんとあまりにも原初的な処理か。
サバイバルだ。

処理のあとは、着替え。
着替えがないと、この社会的公共空間を通れず、帰宅困難となる。
「誰か来ても絶対開けないように!」
と言い聞かせて、下半身丸出しの息子を一人多目的トイレに閉じ込め、コンビニ店内を無我夢中で物色する。
赤ちゃんのオムツならまだしも、そんな中途半端な小学生のパンツやズボン等がコンビニにあるはずもなく、タオルでふんどしを作るか?など、色々思案し迷い悩んだ挙句、ネイビー色の大人用トランクス(サイズMしかない)を手に取る。
この間、おそらくわずか5分ほどだったと思うがとても長く感じた。

息子は無事だった。
案の定、トランクスの腰回りがブカブカでズレ落ちる。私の腰ベルトを巻こうかと思ったが、トランクスにベルトループなどない。とりあえず何か紐状で結べるものがあれば…と思い、辺りを見回し、息子のジャンパーを取る。
ジャンパーの袖で腰を縛り、ゴムウエストを折り返す。
見た目は短パンの体操ズボン。
これで何とか外に出れる状態になった。

処理したものとパンツとズボン、ポケットに入ってた息子のお気に入りのタオルハンカチも全てゴミ箱に捨てた。
サバイバルだった。

帰り道、キツく言いたくなかったが、「もう小学生なんやから、トイレ行きたいとかなるべく早く行ってほしい」と強く伝えた。外に遊びにいけないし、遠足も行けなくなるよ、と。

「もう小学生なんやから」
あー嫌な言葉やな、と我ながら思う。
でもこの社会を生き抜くためには…と、またサバイバルを思う。

お昼ごはんを食べた後、私が「ええ天気やし公園で遊んで帰ろか」なんて言わなければ、息子もこんな目にあってなかったかもしれない。
そんなことを思いながら帰路につく。

家に帰ってシャワーを浴び、妻にも色々と言われ、どこかしょんぼりしている息子。
おこりすぎや!と息子が言う。
確かにおこりすぎたかもしれない。
妻も私も息子をぎゅと抱きしめる。

つい最近まで息子のお漏らしなんて日常茶飯事だと思っていたけど、いつの間にかあの頃の「当たり前」が当たり前ではなくなり、もうすっかり新しい「当たり前」になっていたことに改めて気がつく。

なんならいつかそうやって自分が親を世話する時もあるかもしれないし、自分がそうなることもあるかもしれない。

今日は、まるで登り続けている登山の何合目かの休憩所みたいな一日だった。
不意に起こる「当たり前」の崖崩れ。
サバイバルやなぁと思う。
家族でどこまで登れるか分からんけど、休憩もええよな。
そんな日もあるよな。

あなたがいなくなってしまうことより、この世界でお漏らししてくれる方が何百万倍も嬉しい。
生きている。
いけるとこまで
生きていこうや。

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