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リアルタイム外国人技能実習24時

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ビル新聞連載コラム「リアルタイム外国人技能実習24時」を加筆した記事と日々の東南アジア遠征活動についての備忘録。
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記事一覧

技能実習における安全衛生管理の現実

技能実習における安全衛生管理の現実

5月下旬に厚生労働省が公表した「令和4年の労働災害発生状況」によれば、 外国人労働者の 死傷者数が増加の一途をたどっている。

労災により4日以上休業した外国人労働者の数は 4,808人にも上り、十年前と比較すると約3倍の記録を示し、 技能実習生に関しては、労災件数が増加傾向であるとともに、千人率(労災件数/千人)は日本人も含めた全労働者全体の平均と比べて1.6倍と突出して高い。

本来、技能実習

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静岡県の外国人材事情

静岡県の外国人材事情

「日本へ行ったら、富士山に登ってみたいです。」

これは、技能実習生面接の際によく耳にする定番フレーズだ。

そんな美しい富士山の風景と広大な茶畑で知られる静岡県は、豊かな自然と工業が共存する場所とあって、さまざまな業種において大勢の外国人労働者が活躍している。

中でもとりわけブラジル国籍者が多い点は目を引く。県内の外国人労働者の三割近くを占め、全国では愛知県に次ぐ第2位である。

これは、静岡

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カンボジア人が日本を選ぶ理由

カンボジア人が日本を選ぶ理由

これまで実習生送り出し国の主翼を担ってきたベトナムの穴を埋める存在として、カンボジアへの期待が高まっている。

コロナ禍を乗り越えたカンボジアの経済回復は好調で、2021年後半以降、輸出・内需共に予想以上の成長を示している。

地政学的には中国が「一帯一路」の重要拠点に位置付けている一方で、内政的には7月の総選挙で37年ぶりにフン・セン首相から子息へ首相後継がなされるのではと囁かれている。

内外

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カンボジア人材の転換期

カンボジア人材の転換期

新聞報道によれば、2022年に新規入国した技能実習生は17万9千人と、コロナ前の95%程度まで回復したとされ、ようやく安定的に招聘できる環境が戻ってきたと見られている。

一方、外国人材を巡る様々な状況変化が表面化し、今後を懸念する声もあがっている。

顕著な例では、ベトナム実習生の「日本離れ」だ。

これまで半数以上を占める最大の派遣国であったが、希望者の減少が加速している。

人材確保に窮する

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ベトナム人元技能実習生のジャパニーズドリーム

ベトナム人元技能実習生のジャパニーズドリーム

技能実習制度の見直しが議論されているが、実習制度をきっかけに人生を切り拓いている若者たちがいる。

埼玉県本庄市の某建設会社で建設エンジニアとして働いているベトナム人 ドン・ヴァン・ヒューさん(写真)がそのひとりだ。

ヒューさんは元技能実習生で、かつて三年間、群馬県伊勢崎市で大工として働いたことがある。

実習修了後に帰国してからは、大手送出機関に就職し、日本の監理団体への営業や、実習生の相談業

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クーデター後のミャンマー技能実習生事情

クーデター後のミャンマー技能実習生事情

ミャンマーという国にどのようなイメージをお持ちだろうか。

映画「ビルマの竪琴」の印象などから、旧国名の「ビルマ」と言った方がピンとくる人も多いかもしれない。ASEANの中でもとりわけ経済発展で遅れを取り、長らくアジアの最貧国と評されてきた。

一方、民主化の流れとともに、発展の伸び代が大きく残っていることから「ラストフロンティア」とも呼ばれ、新たな市場や製造・物流拠点として期待も集めていた。そん

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技能実習のベトナム離れ、終わりの始まり

技能実習のベトナム離れ、終わりの始まり

先日、愛知県大府市の「株式会社Minobordo」の代表取締役 井村稔さん(下写真)に話を聞く機会があった。

同社は技能実習生や特定技能人材を含め、企業の外国人受け入れに関するアドバイス業務を行っている。
代表自らが運営責任者を務めるウェブサイト「ガイコクジンコネクト」には、建設、ビルメンテナンス、食品加工、自動車整備等、様々な業種の受入企業から問い合わせがあり、独自のハウツーと外国人ネットワー

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特定技能、普及の兆しとこれから

特定技能、普及の兆しとこれから

先日、出入国在留管理庁から、「特定技能」資格で在留している外国人が87,471人に上ることが公表された(2022年6月末時点)。
昨年同月の29,144人から一気に6万人弱も増えた計算であり、ようやく制度として普及の兆しが見えてきたともとれる。

とはいえ、2019年の制度創設時に掲げられた「5年で34万5千人」規模に達することは、もはや本格的に難しい事態となり、今後コロナ禍の出遅れ分をどのように

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「登録支援機関」の現実とこれから

「登録支援機関」の現実とこれから

コロナ禍の夜明けとなるであろう2023年は、特定技能人材流入のヤマ場となることが予想される。受入れ企業はその準備に余念がないことだろう。制度を支えるキープレイヤーのひとつに、登録支援機関がある。
受入れ企業からの委託を受け、特定技能人材が、在留中に安定的・円滑な活動を行うことができるように職業上、日常生活上の支援を行う機関である。しかしこの機関が十分機能していない現状があるようだ。

先日、愛知県

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コロナ禍4年目の「技能実習」と「特定技能」のこれから

コロナ禍4年目の「技能実習」と「特定技能」のこれから

コロナ禍4年目となる2023年。
依然として新型コロナウイルスによる経済・生活への影響は続いており、今年は本格的な「withコロナ」が求められる年となりそうだ。

これまでコロナ禍を理由に“とりあえず据置き”とされてきた様々な物事に対して、本腰を入れた改革が求められることだろう。外国人材領域においては、技能実習と特定技能の両制度の改正を議論する政府の有識者会議が開催され、いよいよ具体的な改善が始ま

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コロナ禍のフィリピン人材事情

コロナ禍のフィリピン人材事情

1.2回目の「緊急事態宣言」で、再び入国制限年末から国内の新型コロナ感染は急拡大し、政府は1月7日に首都圏の1都3県に対して、13日にはさらに地方へ対象を広げた7府県を加え、2回目の緊急事態宣言を発令するにいたった。
一方、海外との往来についても、当初は継続が決定していた入国緩和策が、二転三転のすえ停止となった。中韓やベトナムなど11ヵ国・地域を対象に、ビジネス関係者などの新規入国を制限しない政策

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コロナ禍の“特定技能人材”採用事情

コロナ禍の“特定技能人材”採用事情

1.注目される「留学生」から「特定技能」への移行10月より入国規制が徐々に緩和され、技能実習主力国であるタイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジアなどからの入国も再開された。しかし、一日あたりの外国人入国枠が1,000人程度に抑えられているためか、実習生の入国者数は、目立って伸びてはいないようだ。レジデンストラックも監理団体や受入企業にとっては負担となり、円滑に進まない理由のひとつとなっていると言える

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技能実習生受入れの新常識“レジデンストラック”

技能実習生受入れの新常識“レジデンストラック”

1.レジデンストラックとは

(出典:「日本への入国/再入国/帰国の際に利用可能な枠組み」資料より) https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100109737.pdf
日本政府は、新型コロナウイルスの拡大を受けた入国制限措置について、10月1日から全世界を対象に制限を緩和し、中長期の在留資格を持つ外国人に入国を認めることを発表しました。もともと、タイやベトナムなど比

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コロナ禍のインドネシア人材ビジネス事情

コロナ禍のインドネシア人材ビジネス事情

1.インドネシアのコロナ事情

8月に入り、日本における新型コロナ感染は再拡大し続け、第2波が進行している状況である。4月の第1波と比べ重症患者や死者が少ないなどの理由から、当面は、政府が緊急事態宣言を再発令する可能性は低いようだ。
感染抑止と経済活動維持のバランスを重視する考えは理解できるが、是が非でも「Go To Travelキャンペーン」を推進しようとする国と、「帰省自粛要請」を呼びかける地

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