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WebMagazineタマガ

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多摩美術大学芸術学科フィールドワーク設計ゼミが発行しているウェブマガジンです。芸術関連のニュース、展覧会評、書評、美術館探訪記、美術家のインタビューなどアートにかかわる様々な記事…
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記事一覧

ネイルアートが生んだ青いバラや北斎の波へのオマージュ

日野ヒロミ(ネイリスト/モデリングデザインアーティスト)インタビュー  アーティストの日野ヒロミさんは、人の手のように動く球体関節のハンドマネキンを基にユニークなアート作品を手がけている。元々はネイリストだといい、業務と並行してアート作品の制作を始めた。当初はネイルアート業界からあまり受け入れられなかったというのだが……。  血の気を失いつつある手が、枯れかけた青いバラを力なく握っている。辺りの水面に落ちた花びらからは切なさが漂う。生命が尽きていく瞬間を象ったこの作品は、

美術品の経済的価値を決めるものとは何か?〜山口桂(クリスティーズジャパン 代表取締役社長)

 2024年6月28日、多摩美術大学八王子キャンパスで行われた芸術学科の授業「21世紀文化論」に、クリスティーズジャパン社長の山口桂氏が特別講師として登壇した。テーマは「オークションの世界とその舞台裏​​」。はたしてオークション会社は、美術の世界でどう動き、どんな役割をはたしているのか。山口氏は切々と語り始めた。 世界初の美術品オークション会社としてスタート  クリスティーズは1766年にロンドンで創業した世界で初めての美術品オークション会社だ。公開された場で競り合って最

今こそ知りたい! 食の芸術「創作かき氷」の神髄に迫る!!

 ウェザーニューズの2022年9月発表の調査によると、かき氷は気温34℃でアイスクリームの「人気」を超えるという。気候変動の影響もあるのか、ここ10年、凄まじいかき氷ブームが到来している。その中で台頭してきたのが、芸術的とさえ言える個性を持つ「創作かき氷」だ。季節を問わず多くのかき氷ファンが訪れる東京・東日本橋のDEMEKINを訪ね、取材した。  以前は1000円でも「高いかき氷」と言われていたが、今はこだわりの素材や芸術的な仕上がりから値段の幅が広がっており、1杯2000

人間ラブドールと本物のラブドールが並んだユニークなイベント「人間ラブドール生展示」に潜入 @大道芸術館(東京・墨田区)

 2024年5月3日、東京・墨田区の大道芸術館で「人間ラブドール生展示」というイベントが行われた。主催は、人間ラブドール製造所(大阪府東大阪市)。「人間ラブドール」すなわちラブドールに扮した人間が本物のラブドールと一緒に展示されるという驚きの展示だった。この怪しげなイベントの実態を探るべく、会場に潜入した。 「人間ラブドール生展示」 展示は2階と3階で行われた。大道芸術館には常時ラブドールやマネキンが展示されているのだが、今回はそこに人間ラブドールたちが紛れ込んでいた。微動

デザイナー大原大次郎の「手」の痕跡を見る

 東京・銀座のギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催中の大原大次郎の展覧会「Daijiro Ohara HAND BOOK」を訪ねた。  2023年12月に出版された作品集「HAND BOOK 大原大次郎 Works & Process」と同名を冠した本展覧会では、グラフィック・デザイナーとして知られる大原大次郎の創作活動に共通する「手」=HAND を使った仕事の数々が展示されている。作品集を読み進めていくような形で鑑賞することができる。  ギャラリーに入ると、大原の仕事

秋山光洋(舞台美術家)~人気2.5次元舞台シリーズ『弱虫ペダル』の巨大スロープの秘密~

 『ペダステ』では、スロープが舞台装置として設置されている。「パズルライダー」と呼ばれるキャストたちが手動で動かし、時に学校の裏の坂、インターハイ序盤の峠、はたまた最終決戦が繰り広げられる坂とさまざまなレースコースに変化する。物語の大半がレース場面の『ペダステ』では、必要不可欠な舞台装置だ。  しかし、秋山さんが初めて演出家の西田シャトナーさんに会ったときには、「正直自分の演出の感覚では、セットがなくてもできるんです」と言われたそうだ。「でもセットでさらに面白くなることがあ

【タマガ体験記】カフェでポタリーペインティングをやってみた @ぽたかふぇ。(東京・高円寺)

 2023年10月、東京・高円寺にある「ぽたかふぇ。」を訪れた。2012年4月にオープンした、ポタリーペインティング(陶器の下絵付け)ができるギャラリーカフェだ。カフェを営業しながら、展示とポタリーペインティングのワークショップを行っている。このほど、記者は陶器に絵を描く楽しみを体験すべく、同店のワークショップに参加した。  店に続く階段を上り切ると、店長の松永美樹さんが笑顔で迎えてくれた。店内には作家のイラストや絵画、松永さんお気に入りの雑貨などが飾られていた。 ポタリ

【タマガ探訪記】 彫刻になったゴッホと箱根で出会う

彫刻の森美術館(神奈川県箱根町)    訪れたのは11月中旬の平日。雲ひとつない快晴、屋外展示を楽しむのにうってつけの彫刻の森美術館日和だった。日本人だけでなく外国人も多く訪れており、平日にもかかわらず賑わいをみせていた。7万平米もあるという広大な敷地の中に約120の彫刻が置かれている。作品には触らないのが基本的なルールだが、中に入ったり腰掛けたりできるものもある。音声ガイドのある作品も15個あり、作品の見方を教えてくれる。    印象に残った彫刻をいくつか紹介しよう。1つ

眠れないホテル、MANGA ART HOTEL,TOKYOに宿泊してみた!

 MANGA ART HOTEL,TOKYOは地下鉄神保町駅から7分ほど歩いた、地上9階建ての商業ビルの4階と5階にある。4階が女性専用フロア、5階が男性専用フロアとなっている。チェックインは5階で行うが、それ以外にフロアの行き来はできない。  チェックインを済ませ、4階の鍵番号を入力してドアを開けると、”MANGA ROOM"と書かれた扉が目の前に現れた。扉を開けた先には今年漫画大賞を受賞した漫画が1位から順に並べられている。さらに奥へ入っていくと、所狭しと漫画が並んだ空間

自然光で日高理恵子の「空」を見る

 家村ゼミ展2023『空間に、自然光だけで、日高理恵子の絵画を置く』が、多摩美術大学八王子キャンパスのアートテークギャラリーで開催されている。展覧会名のごとく、人工照明を用いずに絵画を自然光のみによって見せている。同ギャラリーの4つの部屋に展示されている日高理恵子の作品は計5点。それぞれに、異なる姿の樹木が描かれている。同ギャラリーにある複数の大きなガラス窓からの採光の下で、それらの絵は空間に溶け込んだかのように存在し、自然の美しさを放っているようにも感じられた。  201

未来を望む! 新たな国際アートフェア「Tokyo Gendai」を訪ねて

 フェア初日の7月7日は、日本や中国で毎年行われる伝統行事「七夕」である。会場中央では、そのイメージを表現に取り入れたという彫刻家・大平龍一のインスタレーション作品《The Circuit》が展示された。今回のアートフェアのために制作されたものという。たくさんの彫刻が立つ中に、レース場のような「サーキット」が敷かれている。伝統的な美意識や文化の多様性を問うコンセプトと、ダイナミックな展示方法が印象的だった。 アートの未来のあり方を感じる展示  Tokyo Gendaiは、

ヴィジュアル作品としての表現を追究した詩人・北園克衛の資料が物語るもの

1993年に「北園克衛文庫」を設立  北園は、日本を代表するモダニズム詩人であり、詩作のほか評論の執筆、雑誌の編集、書籍の装幀など幅広い分野で活躍した。本学は北園の多くの資料を収蔵する機会を得て1993年に「北園克衛文庫」を設立し、関連の展覧会を開くなど顕彰に務めてきた。 詩をヴィジュアル作品として捉えた北園  「紙面の広がり、漢字とかなの配分、レイアウト、フォント、すべてに明晰な北園の美学が冴えわたっている」「抽象絵画のような、具象彫刻のような、北園の独自の詩世界」と

大雨で倒れた樹齢1300年の御神木から生まれた佐藤壮馬のアート作品@資生堂ギャラリー

東京・銀座の資生堂ギャラリーで開催中の第16回 shiseido art egg展で、佐藤壮馬のインスタレーション作品《おもかげのうつろひ》が展示されている。会場でこの作品を初めて見た人は、おそらく何をどう表現しているのかがまったくわからないのではないだろうか。 しかし、感じられる何かがあるはずだ。曲面を成した白い物体が、見えない何かを円柱状に囲んでいる。つまり、その円柱部分には、何かが存在していることをほのめかす。 それは、2020年7月11日に豪雨によって倒れた、岐阜

フランスにこんなに暗い絵があったとは! ブルターニュ展@国立西洋美術館で「黒の一団」の絵を見る

国立西洋美術館で開かれている企画展「憧憬の地 ブルターニュ モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」は、フランスのブルターニュ地方という地域をテーマにした企画だ。フランスはモネ、ルノワール、ゴッホらをはじめとする多くの偉才を生んだり育てたりしてきたが、特に19世紀以降は鉄道網が整備されたことなどから、移動が盛んになった。 ブルターニュ地方はフランス北西部にあり、半島を成して海に面している。19〜20世紀前半にはモネ、シニャック、ゴーガン、さらには黒田清輝など、多くの画家がこの