空想お散歩紀行 自分探しの旅
私は今年で211才になります。
当然人間ではありません。アンドロイドです。
製造されてから、バージョンアップを重ねてついにこの年齢にまでなりました。
しかし、私は私のことが分からないのです。
いえ、当然生今日までのアップデートを、何回、いつ、どのような内容で行ったのか全て記録は残っています。
体の各種パーツの交換もどれだけ行い、性能がどれだけ拡張されたか、全てデータとして出力することが可能です。
しかしそれでも、私は私のことを知らないと言うことができるのです。
アンドロイドなのに、このことを言語化できない原因を特定することができません。そのことがさらに私の思考回路に負荷を掛けるのです。
だから私は自分のルーツを探す旅に出ました。
自分のメモリの中には無い情報を求めたのです。
体に使われているパーツの一つ一つ、例えば一つ前の腕のパーツが作られた工場に行ってみたりしたのです。そこからさらに一つ前、一つ前と、少しずつ自分のハードからソフトに至る全ての過去を遡っていくつもりです。
最近、最初に私を造った人がメモリの奥から出てきたことがあります。
当然その人はもういません。ただその人の言葉がわずかに欠片として私の中に残っていたようです。
その言葉はもうデータが断片化していて修復は見込めそうにもないけれど、この旅を続けていけばもしかしたら、そこに辿り着けるかもしれない。そしてそこにこそ私が私である意味を知る何かがあるのではないかと推測するのです。
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