空想お散歩紀行 桜蜃気楼
桜の花が木々を彩り始めたころ、始まりはその出会いだった。
彼女は、10年前に2度と会えない永遠の別れをしたはずだった。
それも見た目まで10年前のままの姿で僕の前に現れた。
幽霊なんて信じたことはなかったが、そう思えてしまうほど、生き写しだった。
だが、その彼女には足もあるし、言葉も交わせたし、温もりもあった。
これは、桜が散るまでのほんの一瞬の間だけの物語。
これは過去の贖罪の話なのか、それとも未来への希望の話なのか、それは分からない。
ただ、突然目の前に現れた幻のような話。
ただ、もう一度彼女と過ごす一週間の、どこにでもある日常のような非日常だ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？