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空想お散歩紀行 サクラに沈む

旅人が立ち寄ったそこは、実に奇妙で不思議な妖しさを纏った場所だった。
地面が一面ピンク色に染まっている。
そう見える原因は大量に落ちている花びらだ。
ピンクの花びら一つ一つはそれほど大きなものではないが、それが隙間もないほど地面に積もっているのだ。
それだけではない。地面のところどころが小さな山のように膨らんでいる。それがいくつも並んでいた。
地面と同じピンク色の山に近づいてよく見てみると、それが家であることが分かる。
ここは一つの町だ。いや、町だったのだ。
この世界には不思議な現象が存在する。
それがこの花びらだ。このピンク色の花びらは確かに存在するが、この元となる花なり、木なりがどこにあるのか、それを誰も見たことが無い。
ある日突然、天から無数の花びらだけが降ってくる。そして全てを覆いつくしてしまうのだ。
誰が言ったか知らないが、この花びらは「サクラ」と呼ばれている。
この町もおそらく数年前までは普通に人が暮らしていたのだろう。しかし、突如降り注いだ厄災に人々はこの土地を離れなければいけなくなったのだ。
そう、サクラは厄災なのだ。一見、淡く儚げな色をしたこの花びらは世界の人々の体に害を与える。
旅人も、顔を覆うマスクをして、この元町だった場所に足を踏み入れていた。
サクラがどこから来ているのか、原因と真実と解決法を見つけ出すために。
しばらく滞在した後、旅人は再び出発するだろう。次なるサクラに沈んだ土地を目指して。

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