空想お散歩紀行 久しぶりの晴れ間
久しぶりに雲の間から太陽が顔を出した。
どれくらい久しぶりか忘れてしまうほど、ずっと太陽を見ていなかった感じだ。。
不思議と視線が上がる。それまで当たり前と思っていた景色がこんなに明るいことを忘れていた。
ここまで長い間、下ばかりを見て歩いてきたような気がする。
そうだ、自分というたった一人の人間の目が捉えることができる景色でさえ、ここまで広いのだ。
視界を狭めていたのは、他でもない自分自身だった。
顔を上げたら、正面から風が当たる。顔から髪を伝い、首から背中へと心地いい空気が流れていく。
自然と呼吸が深くなる。体の中にも新鮮な空気が渡っていく。
体の外と内、ほんの薄い壁を隔てて体が風と一体になっていくようだ。
ふと、思い出したことがある。
そうだ、自分は絵を描くことが好きだった。
いつの間にか、忘れてしまっていた。いや、忘れようとしていたのかもしれない。
久しぶりに描いてみようか。まだ道具は捨てていないはずだ。捨てなかったのは未練だったのかもしれないが、とりあえず良かったと思うようにしよう。
好きなことは、ずっと好きとは限らない。どこかで忘れてしまったり、捨ててしまうこともあったりする。
でも、また始めていいのだ。
太陽がまた雲から顔を出すように。それはある時突然、光が差し込んできたりする。
さあ、何を描こう。こんな気持ちになったのは本当に久しぶりだ。
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