空想お散歩紀行 旅はその道そのもの
旅行とは、目的地に辿り着くことだと考えている人がいる。
目的地に着いて、そこで何をするか、何を見るか、何を食べるかばかりが注目されているが、私は違う。
それももちろん旅行の醍醐味だ。
だが私は、道中こそが旅だと思っている。
見知った町、見知った家、見知った部屋という日常から、写真や想像でしか見たことのない知らない場所という非日常に行く。
その途中、日常から非日常へと変わりゆく、その瞬間を味わうことが私にとっての旅行だ。
これはきっと、遥かな昔の旅人も同じ想いを
抱いていただろうと思いたい。
このように、宇宙を旅する時代になっても、人の本質は変わらないはずだ。
今、旅客宇宙船の個室の窓から外を眺めている。
そこにあるのは、ゆったりと流れていく青や緑や黄色の光の帯だ。
宇宙の旅行は基本長距離だ。だから移動中はワープ空間にいる時間の方が長い。
だが、ワープにも種類がある。
私がいつも利用しているのは、ワープの中でも一番ゆったり移動するワープだ。
超光速なら十数分で行けるところも、数時間掛けるのが好きだ。
特に何をするわけでもなく、ぼんやりと窓の外の景色を眺める。
変わり映えの無いワープ空間だが、この時間こそが私にとってこの上ない充実感を覚えるのだ。
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