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空想お散歩紀行 魂の複業

命というものは有限である。しかし、魂は無限だ。
一人の人間が死を迎え、その命は尽きても、魂は還るべき場所に還り、そしてまた別の命として生まれ変わる。
命は決して、それまでの記憶や経験を引き継ぐことはないが、魂はそれらをちゃんと全て持っている。
そうして魂は永遠の旅をしているのだが、そんな魂界で、最近少し変化が起きていた。
従来は、魂は一つの命として活動しているのだが、もっと別の体験もしてみたいということで、複業を始めている魂もいるのだ。
例えば、一つの体が眠っている時間を利用して、その間は別の体で活動する、みたいなことだ。
ただしそれにはルールが定められていて、同じ世界の命を二つ以上掛け持ちしてはならないという決まりがある。いろいろと面倒なことが起きる可能性があるからだ。
だから魂たちは、科学が発達した世界で活動している命が眠っている間は、魔法が発達した世界で動いている。
世界ごとに時間の流れる速度も違うので、ある世界の一時間が、別の世界では一日ということも珍しくない。
その時間差によるスキマ時間を巧みに利用した魂の中には、3つも4つも命を掛け持ちしているものもいる。
架空の世界を想像することに長けている者が
どの世界にも必ずいるものだが、そういう人は魂が複業をしているため、別世界の記憶や経験が微かに流れ込んできているわけだ。
魂はいくつもの命を同時に渡り歩いて、今もどこかで動き回っているのである。

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https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

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