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空想お散歩紀行 エルフの時間感覚

長生きというのはそんなに良いものなのだろうか。
エルフはやたらと他種族、特に人間のような短命な種族からうらやましがられる。
でもそれは100年程度しか生きられない種族から見たらそうなのであって、私たちエルフからすれば、極々普通の寿命なのだ。
人間で例えれば、10年程度しか生きられない動物から人間は長生きでいいなと言われても、人間を長命な種族だと思うだろうか、そしてそれを素晴らしいと思うだろうか。
むしろ私はこのエルフの寿命が疎ましく思う時がよくある。
私たち並みの寿命を持つ種族などそうそういない。ほとんどは私たちより先に老いて死んでいく。
だから他の種族とは、本当の意味で深い友情というものを築いたことがない。
仲良くなるにつれ、相手が自分よりずっと早く死んでいくのだと思うと、どうしても絆という紐を強く結ぶことをためらってしまう。
だが、さすがに1000歳を超えると多少は開き直りみたいなものが出てきて、むしろ生きることを謳歌できるようになってきた。
最近は人間族が作っている創作物にハマっている。
私たちエルフは長い時を生きることができる弊害か、何かを作り出して後世に残そうという意識が希薄だ。この辺りは、寿命が短い人間族のよい面ではないだろうか。
特に最近おもしろく思っているのが人間たちが描く、様々な物語だ。本や映画など、思った以上に数が多く、さらには深い作品が多くある。私はそんなつもりは無かったが、心のどこかで短命種が深みのある創造とするなどとバカにしていたのかもしれない。
まったくもって長く生きているだけでは大したことないと思い知らされた。
そして、つい先日知ったのだが、とある映画が素晴らしいという話を聞いた。しかし、それは少し前の作品らしく、もうどこの映画館でもやっていなかった。
そこで生まれて初めてレンタル店に行き、その作品を借りてきた。
いや、いい作品とは聞いていたが、まさかここまで感動できるとは思わなかった。この感動はあと1000年経っても決して忘れることはないだろう。
そしてその感動を胸に、借りた作品を返しにやってきたのだが・・・
「えーと、10年レンタルされてますね。延滞料金お願いします」
たった10年借りただけで、思いもよらぬ金を払わされることになった。
やはり、命の差というのはどうしようもないほどの隔たりということなのだろうか。

その他の物語
https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

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