空想お散歩紀行 夜の中で忍び、運ぶ
古来より影に闇に、活動する者たちは存在した。
この国では彼らは忍びと呼ばれ、文字通り決して表に出ることは無く、ひたすら裏方に徹している。
彼らの仕事は、諜報や暗殺などどす黒い仕事ばかりではない。
重要な物を運ぶ、それも大切な仕事だ。
今回の仕事も彼らにうってつけのものだった。
昼間は日の当たらないところで息を潜ませ、日が落ちたら夜の闇と同化して進む。
太陽が顔を出さぬうちに、一刻も早く、一歩でも速く先に進む。
闇の中を生きる領域とし、機動性に優れた忍びだからこそ、その任務は達成できたと言えるだろう。
「さあ、どうぞ買って行っておくれー!」
威勢の良い声が響き渡る。
日がとうに落ちている時間だというのに、その一帯は昼間のように煌々と輝いていた。
今夜は縁日の祭りだった。
「特製のかき氷だ!なんとこの氷、遠くは北の地から運ばれてきた天然の氷から作られてるよ!数に限りがあるから、急がないとすぐ売り切れちゃうよ!!」
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