見出し画像

空想お散歩紀行 呪いの力は巡り巡って伝説へ

私の家系は古くは平安時代から続く呪術士の家系だ。
だが、現在では残っているのはその血のみで、術の方はほとんど枯れてしまった。
出来ることと言えば、天気や人の運勢を占うくらいのもので、それでさえもはっきり当てることができるわけではない。
力がものを言う侍と刀のこの時代に、そんなものが役に立つことは少ない。
でも、この血を絶やすことなく受け継いできたことに意味はあるはずだ。
必ず一族の栄光を取り戻してみせる。それを自分の人生の使命と信じ、これまでやってきた。
私が目指したのは、先祖が得意としていたという人を意のままに操るという術だ。いかにも呪術といった感じがしていい。
これを使い、諸国の武士や有力貴族を操ることができれば、お家復興どころか、この国を支配することすら可能になるかもしれない。
そう思い、私は先祖が残した記録や、自分の家系ではない呪術のことも研究し続けた。
そして、操りの術式を組み込んだ薬を作ることに成功はしたわけだが、これがいまいちな結果に終わってしまった。
まず人を操ることはできず、ちょっとした動物に効果が出るくらいだった。
しかも意のままに操るというよりは、こちらの言うことをよく聞いてくれる程度の、何とも微妙なものだった。
考えてみれば、もし先祖が誰でも操れる呪いを持っていたのなら、家系は廃れることなくとっくにこの国は一族のものになっているはずだ。
急に全てがバカバカしくなった私は半ばやけくそで、残った薬と地元で取れた材料を使って、動物と仲良くなれるきび団子を作った。
そしてそれを町で売ってみた。動物と~の辺りは説明が面倒なので端折ったが。
そうしたら、一人の老婆がきび団子を買ってくれた。何でも子供が旅に出るのでその時に渡してやりたいとのこと。
その老婆は少し前に噂になっていた人物だった。
もう年老いた夫婦なのに、いきなり子供ができて育てているという。何でも川から流れてきたところを拾ったとか何とか。
赤ん坊が川から流れてくるなんてそんなことあるのかと思ったが、まあきび団子が売れたからよしとするか。別に人間が食べる分には何の問題も無いし。

その他の物語
https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?