空想お散歩紀行 自分ちの隣にできると嫌なもの
今、地球の人々は一体となっていた。
役所の前に集まった人々はまるで一つの大きな体の生き物みたいにうごめいている。
群衆はそれぞれプラカードを持っていたり、拡声器を持っていたりするが、共通しているのは皆怒りの感情を表していることだ。
彼らが行っているのは反対運動だった。
理由は新たなゴミ集積場の建設についてのものだ。
自分たちの住んでいる所の隣にそんなものが建つことに反対する人々が怒気を荒げているのだ。
そのゴミ集積所は月に建設予定になっていた。
自分たちが住んでいる地球の隣の衛星にゴミが集められたら、地球から見る月の景観が損なわれる恐れがある、それが主な理由だった。
これは、地球に限った話ではない。
宇宙に広く人々が住むようになってから、同じように衛星を持つ惑星では同じような問題が頻発している。
しかし、宇宙全体のゴミ問題から見たら、地球のような地域惑星の事情は小さく見られがちだ。
現在地球に住んでいる総人口8億。この程度の声はなかなか宇宙の遠くまで響くことはない。
案の定、反対運動は実を結ぶことなく、月に新たなゴミ集積場が作られることになった。
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