空想お散歩紀行 社会人の夏休みは
もうすぐ夏休み。
学生であれば誰でも、予定があろうと無かろうと浮足立つ時期である。
しかし、社会人ともなるとそれほどでもない。
世間が夏に浮かれようが、仕事は毎日あるからだ。
しかし、彼らには彼らなりの夏休みがある。
短い期間ではあるが、それでも夏休みには違いない。
「今年の夏はどっか行く?」
「せっかくだから出掛けようと思ってるよ」
職場で二人の男が昼休みに話をしていた。
「やっぱお盆?」
「そりゃそうだろ。その時期じゃないと休み取れないし」
彼らの仕事は春夏秋冬忙しさを問わない。しかし、唯一お盆の時期だけは仕事が極端に減るのだった。
「でも出掛けるとしたらどこよ?」
「そうだなー。一昨年は北海道行って、去年は沖縄行ったから、今年は普通に東京にしてみようかな」
「え、人多いだけじゃね?」
「いいんじゃないの、それが。いかにも現世って感じで」
ここ、あの世は死者による社会が営まれている。
あの世の住人は、死者の世話や管理などを常日頃から仕事としている者が多い。
そんな死者たちは、お盆になると自分が生まれた家へと帰省していく。
だからあの世はお盆の時期は暇になるのだ。
それを利用して、あの世の社会人たちは現世へと旅行へ行くことがメジャーな夏休みの過ごし方なのである。
現世のお盆シーズンに観光地などが当たり前のように混むのは、このようなあの世からの旅行者も紛れているからなのである。
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