空想お散歩紀行 その捜査犬からは逃げられない
そのテレビ局の朝のニュースには人気のコーナーがあった。
はたらく動物たち。
世間のいろいろな所で働いている動物たちを毎日一匹ずつ紹介していくコーナーだ。
駅の改札口で通勤客を見守る猫や、お店に来た人を接客する犬などが出てくる。
今回紹介されるのは、警察犬のドーリーだ。
空港が彼の仕事場で、そこで日々犯罪者に目を光らせて、いや、鼻を利かせている。
空港は毎日いろいろな人が出入りしている玄関だ。
特に宇宙からやってくるビジネスマンや観光客は増加の一途を辿っている。
ほとんどは善良な異星人たちばかりだが、中には邪な心を持って地球にやってくる者もいる。
ドーリーはそんな心を嗅ぎ分けるのである。
いや、正確には彼が嗅ぐのは心ではないが。
彼が担当するのは変装タイプの宇宙人の侵入阻止だ。
入星審査では変装などをせず、自らの出身星を明らかにするのが決まりだ。
だが、中にはこれを破る者もいる。変装が得意な異星人に多い。
自分の体の表面の色や模様を自在に変えることができるタイプ、自分の体の周りの光の屈折率を微妙に変えることで本人とは違う像を周りに誤認識させるタイプなど、変身ができる異星人は意外と多い。
変身して入星するのは当然やましいことがあるからなのだが、そこでドーリーの出番である。
変身ができるタイプの異星人がどれだけ巧みにその姿を変えようとも、体の中を流れる血を変えることはできない。
そしてそのような変身の能力は総じて血流を加速させることが判明している。
その際に生じる汗から出る特別な物質をドーリーは検知することできるのだ。
異星人捜査犬の彼は、今日も地球の平和を守るために玄関でちゃんと番犬をしてくれているのだ。
明日のはたらく動物たちは、旅客宇宙船の長い旅の中、客の心を癒すために船内の猫カフェで働く、ルッセルのお話である。
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