空想お散歩紀行 心静かに不安の中に
青年は一人で旅をしていた。
彼が今歩いているのは、『巨人の箱庭』と呼ばれる場所だった。
森林や、川や池が見事に調和しているその一帯は、まるで人間以外の、それこそ巨人の手によって意図的に作られたのではないかと思われるような完璧な作りだった。
その自然の中を歩いていると、あらゆることがちっぽけに思えてくる。
自然の偉大さ、人間以上の存在を思わせる何かが、青年の心に流れ込んでくるようだ。
そしてそれは不思議な不安な形にもなって入り込んでくる。
自分の心配や不安が小さなものなら、そもそも自分とは何なのか。今生きているのは何のためなのか。
しばらく歩いていると、小さな滝が見えてきた。
青年はその近くに座る。聞こえるのは水が落ちる音と鳥の鳴き声だけだ。
青年はただじっとそこに座り、水が流れていく様子を飽きることなく見つめていた。
心の中の不安は依然としてそこにある。でも今はそれといっしょにいることを青年は悪くは思わなかった。
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