空想お散歩紀行 今日も一日忍んでいる
ぼくは忍者だ。
え?忍者なんてもうこの国にはいない。
確かに、忍者をしている人間はもういない。
でも忍者が人間だけだなんて、そんなのは勝手な人間の間のお話に過ぎない。
ぼくは、今も続いている由緒正しい猫忍者の末裔なのだ。
猫忍者は見た目は普通の猫と変わりない。
それはそうだ、でないとこの社会の中で忍べない。だから頭巾とか被ってない。
人間の忍びに仕事は主に情報関係。敵の機密情報を調べる。それをいち早く伝える。敵の情報を知った上で、妨害活動をする。
猫忍者も基本的には同じだ。猫同士で情報交換をしたり、人間から情報を得たりもする。
人間は猫に言葉が通じないと思って、いろんなことを簡単に漏らしてくれる。なめてもらっては困る。猫忍者は人間の言葉だけでなく、他の動物の言葉も知っているのだ。
今ぼくがどんな仕事をしているか?
それは言えない。忍びは情報の大切さを知っている。僅かなことでも自分の命に関わることは珍しくない。
今日はこれから他の猫仲間たちとの情報交換会がある。人間の町の片隅で時々、猫が何匹も集まっている場所があるかと思う。
あれはただ集まっているだけではない。重要な仕事場の一つなのだ。
それが終わったら2時に三丁目の佐々木さんの家に行く。
この時間に行くと、あそこのお婆ちゃんが必ずおやつをくれるのだ。
情報は重要なのだ。忍者猫として食糧の供給はなるべく多くの場所に確保しておいた方がいい。ぼくは表向きは地域猫として顔が知られている。だけど裏の顔は誰も知らない。
今日も明日も昼も夜も、ぼくはこの町で忍んでいる。
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