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空想お散歩紀行 ナースの任務(おしごと)

白衣。それは清廉にして清潔の象徴。
ナースたちは日々、院内の病気や怪我を全て祓うがごとく働いている。
その白き衣装はまさに黒き悪魔と戦うための戦闘装束とも言えた。
そして彼女たちにはまた別の顔があった。
「総員、これより作戦を開始する」
その声にナース服の集団が一段と背筋を伸ばす。
彼女たちの立つ床は先程から上下左右に揺れているが、誰一人として体は直立不動であった。
ここは、動く病院。帝国野戦病院艇『アルマンゲルテ』
元々は戦艦だった船が戦闘で大破し使えなくなったことで改装されて作られた物だ。
ベッドが並ぶ部屋から、手術室など設備はかなり充実している。戦場で傷ついた兵士を一早く回収するために、病院の方から前線に近づくという力技をやってのける救出看護部隊、それが彼女たちだ。
当然前線に近づくこともあって、この船は武装も載せている。この船に勤めている彼女たちは、患者の看病から機関銃の扱いまで熟知した戦場のナースたちなのだ。
その中でも特に実力を認められ、厳しい任務に就くナースたちがいる。
「予定時刻1435にアチンカ海岸へと上陸する」
婦長の声は鋭い刃のように隊員一人一人の体に突き刺さるように響く。
「お前たちの任務はいつも通りだ。上陸後ただちに北上。約12キロ先にいる陸軍第3師団が戦っている前線へと赴き、負傷兵の手当、手術が必要な者は回収」
今、この場にいる彼女たちこそ、この部隊の精鋭。後方の看護だけでなく、実際に最前線に行き傷ついた兵士たちのために働いている。
最前線に行くので、自分で自分を守るだけの武力を持っているのが最低限の条件だ。
「なお、我が看護隊は現在血液が不足している。全ての血液型でだ。これでは負傷した勇敢なる我らが同胞の命を救えない可能性がある」
婦長の話を聞いていたナースたちの体が一瞬ピクリと動いた。
「よって、今回は『特別任務』も同時並行で行ってもらう。普段の通常装備に加え、採血装備も持って行け」
ナースたちの何人かは、その口の端がわずかに上がっていた。
「諸君、血を集めて来い。どうせ散る敵の命だ。我らが同胞を救うために有効活用させてもらおうじゃないか」
ここまで言うと、婦長は一度言葉を止め一息つく。そして改めて息を吸うと、
「我は!戦場に集いたる戦士の前に厳かに誓わん!!」
先程よりも一層鋭い、手術用の刃物のようなその声の後に隊員のナースたちも続く。
『我が生涯を苛烈に過ごし、我が任務を忠実に尽くさんことを!!』
「我は統べての敵たるもの、害あるものを絶つために、力の限り任務の戦果を高くせんことを努む!」
『我は心より同胞を助け、我が手に託されたる郷土の幸のために身を捧げんッ!!』
彼女たちがこの部隊に入る前、戦場ナースとして踏み出した時から叩き込まれる誓詞。
それは彼女たちの意志と体に力を注ぐ呪文だ。
「本当に憎むべき敵とは、その体ではなく心だ。体は我らが丁重に頂こう。では諸君、その純白のナース服が真紅に染まるまで帰ってくるなッ!!」
『おおおおおッッッッ!!!』

10分後、薬や包帯が入った鞄、負傷兵を乗せる折り畳み式の担架、そして背中に背負った巨大な注射器。特殊装備に身を固めた戦場の白衣の天使、正確には味方にだけ天使の部隊が上陸し一斉に走り出した。

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https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

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