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空想お散歩紀行 雨の朝の憂鬱

朝から豪雨。出掛ける予定のある人間は誰だって憂鬱になってしまうだろう。
俺もそうだ。だが出掛けないわけにはいかない。なぜなら俺はヒーローだからだ。
悪は天候なんて関係無くやってくる。そんなやつらから街を守るのが俺の仕事だ。
と、言いたいところだが、実は雨の日は怪人どもの犯罪率も大幅に下がるのだ。
つまり、雨の日に外出したくないというのはやつらも同じなのである。
携帯の画面に目をやると、そこにはいつもの風景が映っていた。
街の中に何台も置かれたライブカメラ映像。
ヒーロー職の者たちはこれを見て、街の様子を知り、何かあれば現場に駆け付けるのだ。
そのカメラの中の一台が、一つの影を映した。
建物の壁に貼りつき、隣の建物、街灯を軽やかに足場にしながら跳ねていく、まるでカエルのような動き。
ちょうどカエルのような緑を基調としたスーツに身を包んでいるあいつは、同業のやつだ。
ヒーロー、フロッグシックス。
晴れの日には絶対出てこない、雨の日だけ活動するヒーローだ。
ヒーローとしてだけではなく、今や梅雨の時期の風物詩的な存在にまでなっているうえに関連グッズも多数販売されている。
いいなあと、正直思うが、彼のように期間や季節限定のヒーローがいることは正直ありがたい。一般的なヒーローの負担が軽減するからだ。
さて、今日も防水仕様のヒーロースーツを着て、俺も出掛けるとするか。

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