空想お散歩紀行 押しかけゴースト
まあ、待て。いきなり俺が見えるようになって驚くのは分かる。だが落ち着け。
いいか、まず最初に言っておくが、俺はいわゆる幽霊だ。
だから落ち着け。何もお前を呪い殺そうとかそういうことをしたいわけじゃない。
まずは話を聞け。
いいか。お前が急に俺を見ることができるようになったのは、お前が何か能力的なものに目覚めたとか、そういうのでは決してない。単に俺の方から見えるようにスイッチを入れたようなもんだ。
何でそんなことをしたかって?それをこれから話すんだから静かにしとけ。
まず最初に言っておくと、俺はお前に憑りつくことになった。だから落ち着けって何度言ったら分かるんだ。危害を加えたいわけじゃねえよ。俺は悪霊じゃねえんだから。
えーと、どこまで話したっけ?ああ、まだ最初か。
いいか。俺たち幽霊にはいろいろなやつらがいるが、その中で俺は人間に憑りつくタイプの幽霊だ。
憑りついてどうするんだって?ああ、今お前の頭の中で考えてるようなことはしねえよ。
呪い殺すとか、生気を奪って健康を害するとか、不幸にするとかは昔の話だ。
今はそういうのやっちゃいけない時代なんだよ。お前らの世界も似たようなもんだろ?昔許されてたことが今はできないってやつ。あれと同じだ。
で、ここからが重要なんだが、じゃあ憑りついて何をするんだってことなんだが、憑りついて何をするかよりも、憑りつくことそのものに意味があるんだよ、今の時代は。
しかも、誰に憑りつくかってのが重要でな。
お前たちの世界の有名人。大記録を持ってるスポーツ選手とか、超有名インフルエンサーとかに憑りつくことが俺たちのステータスになるんだ。
もちろん、そんな優良憑り付き先は競争率が高い。幽霊どうしのバトルが勃発さ。
だが、俺は運悪くそのバトルに乗り遅れてしまったわけだ。え?理由?それは、お前あれだよ。前の日に酒や女で遊び過ぎて、つい寝坊・・・って、今はそれはどうでもいいんだよ。もう過ぎたことだ。
要は、俺が狙ってたやつは気付いた時には軒並み他のやつのもんになってて、残ってたのはカスばかりだったってわけだ。
そうだよ?お前がそのカスの中の一人さ。
だが俺は考えたね。すげえやつに憑り付けなかったのなら、憑りついたやつをすげえやつにしてしまえばいいんだってな。そうすれば俺の株も上がるってもんだ。
そういうわけで、頭でも体でも金でも色恋沙汰でも何でもいい。お前の名前を世界中に轟かせるために今日から俺はお前をデカくするために協力してやる。
だからよろしくな相棒。
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