空想お散歩紀行 夜の巡り、出会い
ネットは便利だ。自分が欲しい物は大抵すぐに見つかるし、そこからこんな物もおすすめですよと、別の商品も教えてくれる。
便利だが、それは甘い罠でもある。
おすすめしてくる物は、自分が欲しい物と似た物でしかない。
つまりそれは、自分の想像の範囲を出ることはないということだ。
だから私は今夜も街に出る。
この街には夜から開く店がいくつもある。居酒屋系の店だけではない。洋服店、スポーツショップ、楽器店など様々だ。
元々は吸血鬼や、ゴーストなど、夜に活動する種族のためのものだったが、人間など主に昼の種族たちの間にも利用者はたくさんいる。
私もそのうちの一人だ。
特に夜の本屋巡りが私の趣味だ。夜特有の空気の冷たさや匂いの中を歩いて本屋から本屋へと渡り歩く。
そして特に目的も無く店内を一通り回る。
すると思いがけない出会いがあったりするのだ。
タイトルや表紙の絵が私の中の何かに強く引っ掛かった瞬間がたまらなく好きなのだ。
これはネットでは味わえない。
人は自由にネットの海を泳いでいるつもりかもしれないが、案外泳ぐ場所は決まっていて、それ以外の場所には行こうとしない。
だが、本屋は違う。普段だったら目も向けないようなジャンルの本が突然飛び込んでくる。
偶然か必然か、この宝探しのような感じが好きで、私は今夜も夜の本屋を巡るのだ。
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