空想お散歩紀行 世代間ギャップ
まったく、最近の若いもんは。
まさか自分がこの言葉を思う日が来るとは思わなかった。
確かにこの世界は広い。いろんなやつがいる。
俺もこの世界に入ったばかりの頃は、古いやり方にこだわり続ける上の世代の連中に苛立ちもした。決してあんな風にはならないぞと何度も思ったものだ。
新しいやり方を詳しく知ることもなしに、否定から入るくせに、自分たちのやり方には少しも疑問を抱こうとしない。
こだわりと言えば聞こえはいいが、あれは単なる思考停止で頭が動かなくなっているだけだ。
若いやつらが悪いんじゃない、理解しようとしない上の世代が悪いんだ、と疑問を持つことなく信じていた。
そんな俺もこの世界でずいぶんと時が経った。
そして至った考えが、さっきの言葉だ。
だがそれも仕方ないのかもしれないと、言い訳じみたことも言わせてほしい。
少なくとも、俺たちと上の世代では、やり方に相違があっただけで、見ている方向が違ったわけではない。
そう、俺たちの目的はどれだけ人を呪えるかということだった。
それが悪霊である俺たちの存在意義ではないのか。
上の世代のやつらは、いつまでも古いやり方にこだわっていた。
いつまで柳の木の下から出ることに固執しているのか。もう現代では使われていない道具を依代にすることに何の意味があるのか。
悪霊も時代に合わせることが必要だ。だから俺たちはその時代ごとに流行している物を取り入れてきた。
ある時はおもちゃ、ある時はグルメ、その時代に大勢の人間に浸透している物を材料にすることで呪いは産み出しやすし、広まりやすい。
でも上のやつらはそれを、流されているだけとか軽薄とか言ってきた。
正直ムカついてもいたが、今思えばまだマシだった。なぜなら、さっきも言ったが人を呪うという目的は共有していたからだ。
だが今の若い悪霊たち相手には、その共有すらできなくなってしまった。
あいつらはそもそも、人を呪うのすらもはや時代遅れとかめんどくさいとか言っている。
そんなことに囚われずにもっと自由にやればいいではないかと。昔だったら上のやつらに何か言われたら反撃もしたものだが、今は俺たちに対して若い世代が衝突してくることすらない。
そんなわけで、今若い悪霊たちはスマホでネットに浸って、人間たちと変わらないことをしている。おかげで昔に比べ、現代の人間界では呪い関連の出来事が急速に減っている。
俺は思う。今一度若いやつらには悪霊としてのアイデンティティを思い出してほしい。
自分と違う世代の悪霊とぶつかりながらも、人間界に呪いを振りまき、災いを起こしていたあの輝かしい時代を今一度取り戻そうではないか。
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