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一番辛いこと
大怪我をして、今一番辛いことは骨の痛みではない。
いままで大切にしてきたことができないことだ。
それは「とにかく頑張ること」だ。
骨の中には隋内釘というチタン製の金属が入っていて、ボルトで固定されているのでもう同じような衝撃が発生すること以外では基本的に折れることはない。
僕は上手い選手ではない。
いつも言っているけれど、本当に上手い選手ではない。
じゃあどうやってこれまでサッカーを続けてきたかというと、人より努力すると言うことだ。
質がない分、量をこなすことによってカバーしてきた。そして、量をこなしてきたことによって多くの無駄や失敗を経験して、
必要なものが絞れてきた。
言い換えればそれはこれだけは人に負けないと言う武器でもある。
僕の場合は人よりも泥臭く走ることや身体を張って戦う事だった。それが自分が生き残る術だと思った。
上手い人には勝てないから上手い人との共存を考えた結果、彼らのために自分が走る事で必要性が生まれると考えた。
(例えば、攻撃力のあるブラジル人選手の代わりに彼の分まで守備を頑張れればセットで獲得してくれるかもしれない。)
大怪我をしてから、頑張ると言うことがなかなか難しい。それは体に無理がきかないからだ。
痛みがあるからとか、そういうのではなくてなんだか体が怠さを感じたり息苦しさがある。
頑張ることは誰よりもやらないとと思って生活してきた自分だけれど、それができない。
それによって自分に無価値観を感じるし、情けないと失望してしまう。
こんなんじゃダメだ…と思っても体がうまく動かせない。動かせないことによってさらに動かせなくなる。
サッカー選手としての時間は以前よりは長くなったけれど、年齢が上がれば落ちるものはある。
それが大怪我によって大幅に落ちている。
たくさんの時間をかけて積み重ねてきたものが一瞬で崩れ始めた。そして、いまはよくわからない身体の不調に苦しめられている。
うまく自分が思うようにできない。
頑張ることは誰にだってできることだからと言っていた自分が、「頑張ること」さえ難しい。
そんな自分にますます自信を失う。
事故さえなければ…昨年の1月からかなり追い込んでいた。
毎朝ジムに行ってバイクを倒れるくらいの勢いで漕いで頑張ってきた。
いまはそのバイクをゆっくり漕ぐことだって簡単ではない。体の機能(足)としては漕ぐことはできるけれど、身体のあらゆる機能がまだうまく働いていない。
例えば心肺機能だったり、血流や脳なんかもうまく機能していないような自覚症状がある。
筋肉が痩せてきて、以前になかった痛みもある。
膝下のボルトが皮膚に以前よりもダイレクトにあたるような感覚がある。
怪我した時は、「頑張ること」が取り柄だった僕は治したらまた強く作り直せばいいと思っていた。
しかし、待っている現実はあまりに辛く、うまくいかないことの連続だった。
頑張ることすら辛い。
自分の体がうまく動かせない。
痛いとかじゃなくて、身体の不調や心のコントロールがうまくできていない感覚だ。
足はどんどん血色が悪くなり、筋肉もなくなってきて、以前のような強さは感じない。
元々フィジカルタイプの選手だったのに。
頑張ってきたことが崩れて、頑張ることでそれを取り戻そうと思っていたけれど、それが難しいと言う状況に、自分はとても苦しんでいる。
そして、体調は普通だとは言えない状況。
こんな自分ではダメだと言うことを自分が一番感じている。
だったら頑張ればいいじゃんと怪我前の自分なら言っている。
それもわかっている。
なのにそれができない。それが一番辛い。