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現代美術って未来へのバトンなんじゃないでしょうか?

こんにちは。
有田で陶芸家をやっております、辻 拓眞と申します。

先日、ありがたいことに『TRiCERA ART』という日本から世界展開している現代美術のECサイトに掲載していただくことになりました!すごく嬉しい!

これを受けて、現代美術に関して縁遠く感じている皆様へ、私なりの現代美術への向き合い方を少しお伝えできたらと思っております。

今回のポイント
・ドイツで観た『オラファー・エリアソン』
・良書『13歳からのアート思考』
・『ミケルバルセロ展』から


ドイツで観た『オラファー・エリアソン』

まず私は大学生の頃、現代アートがチンプンカンプンだったという話。

5,6年前でしょうか。大学の研修旅行でドイツに行ったんですね。そこでは教授と何人かの学生でドイツのハレにある大学と…簡単に言えば、交流する目的で2週間の滞在をしました。

当然その間、交流だけをしていたわけではなく、観光も兼ねてたくさんの美術館を回ったりもしました。


どこの美術館だったかな…
『オラファー・エリアソン』という現代美術家の作品を拝見したときの話です。

オラファー・エリアソンは日本での展示もあるので、その際には是非チェックしていただきたいのですが、
デンマーク・コペンハーゲン生まれのアーティストで彫刻や光・水・気温などの自然の要素からインスタレーション作品を創造しています。

確かに美しい作品なのですが、作品の表層を見た限りでは何を表現したいのか、私には全く読み取れませんでした。

で、分かったような顔をしながら(演技派なんで。)美術館を出たところ、出口で教授が「久しぶりに、いいものみた〜!」って言ってました笑

この時は内心穏やかでなく、(っていうと怒っているみたいですが、そうではなく…)
正直、作品のよさが分からなかった私はすごく焦りました。

それで帰ってから、オラファー・エリアソンについて調べてなんとなく分かったような気がしていましたが、『現代美術への向き合い方ってこれでよかったのか?』という思いを抱えてしまいます。


良書『13歳からのアート思考』

そんなこんなで5年後、中学校の美術教師をやることになるのですがその時に、末永幸歩さん著『13歳からのアート思考』という本に出会うことになります。これ、本当にオススメですよ。

「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考

この本はざっくり言うと、
19世紀以降、カメラが発明されてからの美術界の動きを有名な6作品から丁寧に解説しています。
現代美術作品への向き合い方を実際にコーチングされるような感覚で、大人こそ面白く読める書籍だと思います。

この本に関する私の解説よりもまずはお読みいただくのが早いかと思いますが。

中でも分かりやすいのは、

絵画や彫刻作品などの表現とはいわば『花』であり、まずは発想の『種』があって、そこから伸びる『根』、つまるところ創作のプロセスこそが、作品の本質であり肝であるという解釈です。

これを汲み取ることが現代美術への向き合い方だと言います。

確かに分かりやすいし…なるほど。腑に落ちるのですが。


うーん…。
出来ないんですよね。実際。

なにせ、これをやっているとめちゃくちゃ時間を使っちゃうんですよね。
美術館で気づきをメモ取りながら、作者の創作の背景を調べたり…。で改めて作品と向き合う。

これって、本当に私達がやらないといけないことなの?って思っちゃいません?笑
少なくとも私には出来ませんね。
時間は大切にしたいので。

この本を批判しているととられると不本意なのですが、むしろこれ以上ない良書だと私は思っております。

でも、現代美術ってお勉強じゃないと思うんですよ。もっと気楽に向き合ってもいいと思うんです。完璧主義を捨ててはどうでしょうか。

そう思うと、現代美術のことが少し理解できたような気がしました。


『ミケルバルセロ展』から

さて先日、長崎県美術館で開催されていた『ミケルバルセロ展』へ行ってまいりました。こちらもすごくよかったです!

ミケル・バルセロ|Miquel Barceló


1957年、スペイン・マジョルカ島生まれ。1982年の「ドクメンタ7」で輝かしいデビューを飾って以来、世界各地で展覧会を開催。1988年以降、頻繁にアフリカに滞在するなかで自身の芸術を確立していき、絵画、彫刻、版画、陶芸などジャンルの垣根を超えた制作活動を国際的に展開する。マジョルカ、パリ、アフリカなど各地にアトリエを構えて精力的に制作を続け、パルマ大聖堂内礼拝堂の大規模装飾(2007年完成)、ジュネーヴの国連会議場の天井画制作(2008年落成)など国家的規模のプロジェクトにも取組んだ。ヴェネツィア・ビエンナーレでは2007年にアフリカ、2009年にはスペインのパビリオンを代表。スペインの国家造形芸術賞(1986年)など数多くの賞を獲得し、2020年には多大な文化的貢献によりサン・ジョルディ十字勲章を受章した。日本国内でも複数の美術館に作品が収蔵されている。
(上記リンクから転載)


そのアートワークについては是非、ご自身で調べてご覧になっていただきたいのですが、

『絵画は思考ですが思考の完成形ではありません』という彼の言葉が印象に残っています。

んーっと…突然ですが、

私が美術館で作品を観るときの話、
まずは早足で見て回って全ての作品を確認してから、印象的だった作品の前に戻ってじっくり観ます。

そこで、目を皿のようにして観た作品はおそらく、私の表現の糧になったり、そうでなければ何らかの文章に残したり、人に話したり…
そんなふうに、どこかでアウトプットすることになるんだと思います。

私たち日本人はどこか完璧主義で、中途半端な出来の物を他人に見せることを恥ずかしく思ったりしますよね?
でも、その創作の過程は誰かが歩みを進めるための糧になるのではないでしょうか?

『絵画は思考ですが思考の完成形ではありません』
現代美術は『完璧』ではないのかもしれない。だけど、私はそれを観て歩みを進めます。奮い立つ気力が湧いてきます。

現代美術は未来へのバトンなんじゃないでしょうか?何かを感じたなら、あなたは明日を歩きだせるかもしれません。

私はバトンを受け取り、未来へつなぎたい。

辻 拓眞 略歴

1992年 佐賀県有田町に生まれる
2015年 佐賀大学 文化教育学部 美術・工芸課程 卒業、 有田国際陶磁展 初入選(以降4回入選)
2017年 佐賀大学 教育学研究科 教科教育専攻 美術教育 修了、佐賀県立有田窯業大学校/佐賀県窯業技術センター非常勤 就任
2019年 日本現代工芸美術展 現代工芸新人賞
現代工芸美術九州会展 九州陶磁文化館長賞
日展 初入選 (以降2回入選)
2021年   現代工芸美術九州会展 佐賀県知事賞

現在、父 聡彦のもとで作陶に励む
ー聡窯について

代々、日本磁器発祥の地である佐賀県有田町で作家として活躍している辻家。香蘭社の図案部で活躍していた先代・辻一堂が、1954年に前身である新興古伊万里研究所を設立し、12年後に「聡窯」と改名し、現在に至ります。

絵を得意とする聡窯では、日本や海外の風景・身近にある自然をモチーフを、先代から受け継ぐ線刻技法と呉須(青色の絵具)で描き、日々作陶に励んでおります。


【聡窯・辻 Sohyoh Tsuji】
〒844-0002
佐賀県西松浦郡有田町中樽1-5-14
営業時間:9:00~17:00(土日祝日/定休日)
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